相続税の生前贈与の加算期間の延長は実質「増税」!? 65歳の「定年前」に備えておくべきことはありますか?
2024年1月より、生前贈与加算の対象期間が3年から7年に延長されました。相続税の課税対象が広がったため、実質的に増税といえるでしょう。 保有している財産が相続税の基礎控除を超えており、相続税対策を検討している方もいるのではないでしょうか。今回の法改正を受けて、早い段階から計画的に生前贈与を行う重要性が高まりました。 ▼子ども名義の口座に「月3万円」ずつ入金してるけど、将来口座を渡すときに「贈与税」はかかるの? 非課税にすることは可能?
2024年1月以降は生前贈与加算が7年以内に
2024年1月1日より、生前贈与をしてから7年以内に贈与者が死亡した場合、贈与した財産を相続財産に持ち戻して計算します(生前贈与加算)。つまり、贈与が行われなかった形で相続税を計算しなければなりません。 2023年12月31日までは、持ち戻しの期間が7年以内ではなく3年以内でした。生前贈与加算の制度には、専ら相続税の節税だけを目的とした生前贈与を防ぐ目的があります。 具体的に、被相続人の相続開始日と加算対象期間は以下のとおりです。 ●令和8年12月31日までに相続が開始:相続開始前3年以内(死亡の日からさかのぼって3年前の日から死亡の日までの間) ●令和9年1月1日~令和12年12月31日までに相続が開始:令和6年1月1日から死亡の日までの間 ●令和13年1月1日より後に相続が開始:相続開始前7年以内(死亡の日からさかのぼって7年前の日から死亡の日までの間) 持ち戻しの期間が長くなった(相続税の課税対象が拡大した)ため、2024年1月以降は相続税の負担が重くなる可能性があります。今後、相続税の負担を軽減するためには、計画的に生前贈与を行う必要があるでしょう。 「今後7年間は生きていられる」という保証はない以上、相続税の負担を抑えたい場合は、早い段階から生前贈与を検討してみてください。
孫への贈与が有利になる可能性
生前贈与加算は、将来相続人になる人への贈与が対象です。具体的には、配偶者や子、直系尊属への生前贈与が持ち戻しの対象となります。 そのため、将来相続人にならない孫への贈与は、持ち戻しの対象にはなりません。 亡くなる直前に孫へ贈与した場合でも、相続財産へ持ち戻す必要がないため、相続税の節税効果を得られます。 ただし、被相続人の子がすでに死亡しており、孫が代襲相続する場合は孫が相続人となります。つまり、贈与した分を持ち戻して計算しなければなりません。 ほかにも、遺言書で孫に遺産を相続させる場合も、孫へ行った贈与は生前贈与加算の対象になります。遺言書で財産を与える旨の記述をすると「相続または遺贈により財産を取得した人」に該当するためです。 また、生命保険金を孫が受け取る場合も「相続または遺贈により財産を取得した人」に該当し、生前贈与加算が適用されます。 状況次第では、孫への贈与が必ずしも有利とはならないため注意しましょう。