せりふなしでも感涙のアニメ「ロボット・ドリームズ」、大切な誰かを思い出す…舞台は80年代NY
観客を泣かせる映画が必ずしもいい映画ではないのだが、「ロボット・ドリームズ」(パブロ・ベルヘル監督・脚本、11月8日公開)は、いとおしくて、切なくて、しかも映画として見ごたえたっぷりのアニメーションだ。1980年代のニューヨーク(住民はみな人間以外の動物として登場)を舞台にした友情物語。自分にとって大切な誰かのことを思い出す人も、きっと少なくないはずだ。(編集委員 恩田泰子)
「アニメ界のアカデミー賞」といわれるアニー賞の長編インディペンデント映画賞など数々の賞に輝き、アカデミー賞そのものの長編アニメーション映画部門でもノミネートされた珠玉の一本。
原作は、2007年に刊行されたアメリカのサラ・バロンによる同名グラフィックノベル。監督のベルヘルはスペインのビルバオ生まれでマドリード在住、「ブランカニエベス」など実写作品で評価を集めてきた人だ。数年前に原作を読み直して改めて感動し、アニメーション映画にしたいと考えたのだという。
原作の舞台はアメリカのどこかだが、映画の舞台はニューヨーク。ニューヨーク大学映画学科修士課程で学んだベルヘル自身の街の記憶が投影されているらしい。
イーストビレッジのアパートにひとり、孤独を感じながら暮らすドッグ=犬が、テレビの通販CMを見て、「友達ロボット」を注文した日から物語は始まる。配達をたのしみに待ち、到着したキットをせっせと組み立て、作動させると……なんだか、いい感じ。
ロボットには周囲の人々、もとい動物のやることをまねる、一種の学習機能があるらしい。一緒に街に出てみると、そのまねのせいでどきどきさせられることもあるのだが、わくわくのほうが断然多い。もともと備わっているセンスが合うようで、街にあふれる音楽も分かち合える。
セントラルパークに繰り出して、アース・ウインド&ファイアーの名曲「セプテンバー」に乗って、ふたりでローラーダンス。うれしい、楽しい、もう、大好きだ。