女子プロも「ストロングロフト化」しているのか?/女子プロクラブ考VOL.6
飛び系アイアン使っている選手はいるのか?
いわゆる「飛び系アイアン」とは、ロフト角を小さくして飛距離を出すコンセプト。クラブ長も通常より長く、ロフト角が小さくてもボールが上がるように低重心化してあるのが一般的。さらにフェースを薄くして反発を出し、飛距離アップを狙っている。今回調査した38人中で、最もロフトが小さかったのは金田久美子の27度(ステルスグローレアイアン)。
他にもロフト角が小さい選手を探してみると、7番アイアンでロフト角30度未満の選手は、西村優菜「X FORGED STAR」(29度)、菊地絵理香「T350」(29度)など38人中5人のみ。彼女たちの特徴は、「飛び系の中でもロフト角は大きめ」ということ。ロフト角が小さいとスピン量は落ち、ボールが止めにくい弾道になる。ツアーのセッティングでもボールを止められるギリギリのロフト角を見極めているようだ。また、ソール幅を広くしたり、比重の重いタングステンなどで低重心化したりして、ボールの上がりにくさをカバーしているのも見逃せない。
勝みなみは唯一のマッスルバックユーザー
一方で、7番アイアンが33度以上の選手は38人中12人。男子プロにも人気があるようなハードモデルを選ぶ選手が意外と多い。33度以上のアイアンは、フェースが肉厚かつしっかりとした打感で、コントロール性能の高いモデルがほとんど。中にはマッスルバックを選ぶ選手もいた。ロフト角が大きいとスピン量も増えるので、硬いグリーンでもボールをしっかり止めることが出来る。
勝みなみは、今回調べた選手の中で唯一のマッスルバックを使用(ダンロップ「スリクソン Z-フォージド II アイアン」(7I/33度)。国内より更にハードな米ツアーを主戦場にしている勝にとって、スピンコントロールのできるヘッドは大きな武器になっているだろう。
ロフト角が大きいアイアンは飛ばないがメリットもある
アマチュアがロフト角33度以上のアイアンを使うことは、メリットがある。ボールを上げやすいし、バックスピン量も増える。打ったボールが落下する時の角度を落下角度(ランディングアングル)と呼ぶが、この角度が大きくなることで、グリーン上でボールを止めやすくなる。プロがアイアンを選ぶ際、この落下角度を重視するようになってきているのも事実。弾道計測器が普及し、数値として止めやすさが分かるようになった事も要因の一つだろう。 この落下角度、PGAツアーではグリーンを狙う際に50度以上が必要とされている。我々アマチュアがプレーする一般営業のグリーンだとどうか。落下角40度以上あれば、グリーン上で止めることができるだろう。フィッティングでも落下角度が重視する傾向にある。基本的にはグリーン上のポイントを狙うことが求められるアイアンには、「飛ばすこと」より「止めること」の価値にもっと目を向けて欲しい。(文・田島基晴)