【独占】KYNE初の大規模個展はなぜ〈福岡市美術館〉なのか?
ホームタウンの福岡をベースに制作活動を続けるKYNEが、国内初となる大規模個展『ADAPTATION』を〈福岡市美術館〉で開催中。これまでのキャリアからアートや福岡への想いまで、KYNEのインタビューを交えた展覧会の独占レポートです! 【フォトギャラリーを見る】 モノクロを基調としたシンプルな線画の中にどこかノスタルジックな空気が漂うKYNEの作品。国内外に多くのファンを持つ彼が日本初の大規模個展の舞台として選んだのは生まれ故郷であり、活動拠点を置く福岡だ。
KYNEは美大時代に身につけた日本画の表現方法と1980年代の大衆文化、ストリートカルチャーをミックスした作風で知られている。知名度を上げたのは福岡の街中に突如現れた、クールな眼差しを携える女性のステッカーだった。
「グラフィティの世界では限られた面積、短い時間の中で最大のインパクトを与えるという側面があります。そういった条件に適応するにはステッカーボムは効率がよかったんです。また、強い印象を残すため、顔をトリミングし、色や線を絞った結果、今の作風が確立されました。その後もキャンバスや彫刻、壁画といったサイズや場所のフォーマットに適応しながら自分のスタイルを拡張してきた感覚があり、《アダプテーション》という言葉を展示タイトルにすることにしました」
展示空間で感じるのもその適応力だ。会場デザインは福岡と東京で活動するケース・リアルの二俣公一に依頼。KYNEが運営に関わるギャラリー〈cassette〉の設計も手掛けるなど親交があった。今回は市の美術館というオーソドックスな作りや既存の備品を活かしながら、ストリート出身らしいKYNEの偶然性を面白がる姿勢を大事にした。
全体を5つのゾーンに分け構成。過去の絵画作品が並ぶzone1には美術館が所有するガラスの展示ケースを利用。立体作品を陳列するケースにあえて平面の作品を入れることでキャンバスの裏面や側面の筆致を可視化した。また、zone2では倉庫として使われている場も活用し、仮設用のポールに絵を掛けた。工事用の照明が照らす空間は、まるで高架下のような雰囲気が漂う。さらに進んだ先のzone4には女性が横たわる巨大な壁面ペインティングが描かれている。 「2020年に〈福岡市美術館〉の壁に絵を描いたことが今回の展覧会に繋がったので、壁画は今回も挑戦したいなと。4×12mというサイズが決まっていたので、それに合わせて構図を考えました」