メルヘンなタイル画がユニーク!鋳物の街に佇む湧水の銭湯 内免湯(富山県高岡市)
光にあふれる浴室
地図を見ると、金屋町の隣の内免という町に内免湯がある。ここだな、銭湯仲間が「ピエロみたいなモザイク画があった」と言っていたのは。数分歩くと、何ともレトロ風味でかわいらしい外観の内免湯が現れた。中に入って脱衣場へ上がると、ガラス戸を通して浴室の奥壁に魚のモザイクタイル画が見えた。あれ、ピエロではないぞ。番台のおかみさんにそう言うと、ピエロのメルヘンな絵は女湯にあるという。 「先代が、孫ができた時につけたんです。孫というのは私の息子ですけど。その子も今は40代なので、40年ほど前の話です」 裸になって浴室へ。まだ昼の3時、先客1名。大きな窓から陽光がさんさんと入って、モザイクタイルの魚がピカピカと輝いている。カラン台にはオレンジ色の笹(ささ)の葉タイル、床には模様の入ったタイルと、味わい深い装いだ。お湯はフワフワと爽やかで、ちょうどいい温度。サウナなどの特別な設備はないが、これはこれで完成形ではないか。 いやはや、いい街へ引っ越してきたものだ。呆(ほう)けきった顔で湯につかり、上がって脱衣場でローカルな牛乳を飲んだ。
「色つけ屋」と「ます1本寿司」
内免湯を出て近くを歩くと、ちょっと変わった建物が目についた。屋根の突出部で換気扇がくるくると回っている。犬を散歩させているおじさんがいたので「これは何の建物ですか?」と聞くと、「色つけ屋、今は空き家」と教えてくれた。 「色つけ屋」という言葉は初めて聞いたが、「塗装業」と言うより想像力が刺激される。周囲には銅器製造の工場や小さな塗装工場もあり、金屋町との境あたりには大きなれんが煙突と「キュポラ(溶解炉)」も保存されている。ふーむ、江戸時代からの産業が少しずつ形を変えながら同じ場所で生き続けているんだな。 あちこち寄り道しながら歩いて戻る途中、「わ田ちゃん」という居酒屋を見つけた。まだ4時台なのにもう営業しているぞ……と、見ると店の前に「自家製のます寿司(ずし)あります」と書かれ、なんともうまそうな写真が出ているではないか。たまらず店内に吸い込まれた。 ビールとますの1本寿司(1,000円)を注文。そしたら付き出しにトコロテンが出てきて、金目鯛(きんめだい)のアラ汁をサービスで出してくれた。うーん、ええ店だ。ます寿司はカドのないやさしい味。少し醤油(しょうゆ)をつけて1本ペロッと食べてしまった。 明るいうちに宿に戻り、この夜もロビーで遅くまで仕事した。