「ポケポケ」はなぜ大人も"ドハマり”するのか? 類似ゲームが見逃した「快感」への強烈なこだわり
原点回帰としての「収集」の喜び
ポケポケを実際にプレーして感じたことだが、ポケモンシリーズの根幹である「収集」の魅力、そしてTCGならではの「集めたカードを並べ、眺める」というアナログ時代からの体験を、デジタルでも丁寧に再現しようとするこだわりが感じられる。 カードパックをハサミで開封する際の「サクッ」という感触を再現した演出や、カードが1枚ずつ明らかになっていく過程の演出はもちろん、獲得したカードが並べられたファイルの見せ方にも工夫が感じられる。 特に、カードに描かれたイラストをさまざまな角度から見られる演出や、レアリティが高く表面に光沢加工がされているカードの光り方・模様が角度によって変わる演出は、相当なこだわりが込められているに違いない。 幼少期、いわゆる”キラカード”をさまざまな角度から眺めたことのある読者も一定数いると思われるが、まさにあの体験をデジタル画面で再現しているのである。 また、収集の一要素であり、本家ポケモンシリーズの重要コンセプトであった「交換」についても、11月時点では未実装ながらメニュー自体はゲーム内に搭載されており、近日公開されると想定される。 このように、他のデジタルTCGが対戦に重きを置くのに対し、ポケポケはTCGのもう一つの魅力であり、そして全てのポケモンシリーズの原点である「収集」という要素に焦点をあてた構成となっている。さらに、収集を主目的とするTCGで課題となる「保管場所」の問題も、デジタル化によって自然に解決されていることも付言したい。 ここまでの内容を整理すると、ポケポケには二つの重要な機能があると考えられる。一つは「TCGを開始する際の障壁を下げ、新たな世代にとってポケカの入口となるきっかけ」であり、もう一つは「フィジカルの魅力を再現し、手軽・気軽に始められることで、かつてポケモンやポケカに触れていた大人世代の回帰のきっかけ」となることである。特に、カードを集め、お気に入りのポケモンを眺めることが主目的のライト層には、非常に適した構成となっている。 ただ、ゲームとしての売り上げを支えるのは本家ポケカ同様にヘビーユーザーたちだろう。当然ながらポケポケの対戦機能ではF2Pの上にP2W(Pay to Win)があり、追加アイテムを購入して多くの拡張パックを開封し、強力なカードを獲得したプレーヤーが有利になるゲームデザインとなっている。サービス維持にはライト層獲得だけでなく、これらヘビーユーザーの維持も必要となる。 ライト層の獲得とヘビー層の維持、デジタルとフィジカル、一見対立する要素の両立をデジタルTCGというジャンルで試みるポケポケ。今後の展開を注視したい。
著者プロフィール:滑 健作(なめら けんさく)
株式会社野村総合研究所にて情報通信産業・サービス産業・コンテンツ産業を対象とした事業戦略・マーケティング戦略立案および実行支援に従事。 またプロスポーツ・漫画・アニメ・ゲーム・映画など各種エンタテイメント産業に関する講演実績を持つ。
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