【現地ルポ】ここは本当に日本か!? 北海道ニセコ"外国人支配"の実態
■日本人もかなえられる〝ニセコ・ドリーム〟 ところで、〝外国人天国〟のニセコは、日本人にはうまみがない場所なのか、というとそうでもないようだ。 ニセコ地域の地価上昇率は全国有数で、2010年頃は1坪50万円程度だったというニセコひらふ地区の一等地の地価は、今や1坪300万円以上となった。30年度に北海道新幹線の開通が予定される倶知安駅周辺も、地価はコロナ前と比較して7~15倍ともいう高騰ぶりだ。マンション建設など日本企業の動きも活発である。 インバウンド景気で、地域の一部のコンビニや牛丼チェーンの時給は1700~1900円に達し、地元への恩恵は大きい。高級ホテルやコンドミニアムが造られるたび、清掃会社や賃貸管理会社など関連する日本企業の仕事や雇用も増えていく。 加えて、最近は投資の場で日本人が再起し始めた。 「日本の若いニューリッチ層の人たちが、ニセコの別荘を買っているんです」 北海道小樽市に本社を置く不動産会社「日本信達」社長の石井秀幸氏はそう話す。彼自身、もとはロシア相手のカニ貿易会社を経営していたが、インバウンドの不動産需要に目をつけ、ニセコや富良野の物件を扱う現在の業種に転換したという、〝ニセコ・ドリーム〟の当事者だ。 「(ニセコの)高級コンドミニアムの利回りは1~2%程度。東京のマンションなら平均4%くらいですから、資産収入だけ見ればいまいち。ただ、1億で買えば2億で売り抜けられるので、その魅力は大きいんです」 石井氏はこう断言する。 「少なくとも今後10~20年以内は、日本国内に〝次のニセコ〟が登場することはないと感じています。これだけ外国人富裕層向けのサービスがそろった土地は、簡単にはつくれないですよ」 先に登場した在日オーストラリア人のスレター氏を含め、取材した人たちの意見は異口同音だった。 バブル期の日本人が造ったスキー場をベースに、香港人らの華人系資本が流入してつくり上げた異形の高級インバウンドリゾート、ニセコ。そのひとり勝ちは、まだまだ止まらないのかもしれない。 取材・文・撮影/安田峰俊