自民党総裁選候補者の顔ぶれと経済政策姿勢
原発再稼働反対の姿勢を事実上修正した河野氏
河野氏は、従来改革派のイメージが強いが、他方で、原発再稼働反対の姿勢が、総裁への道を厳しくしているとも評価されてきた。そうした河野氏は7月31日に、「電力需要の急増に対応するために原発の再稼働を含め、様々な技術を活用する必要がある」と語り、今までこだわってきた「脱原発」の方針を事実上軌道修正した。膨大な電力を必要とする人工知能(AI)やデータの時代になったことを、軌道修正の理由に挙げている。 これは、総裁選出馬を視野に入れた軌道修正と見られている。太陽光など再生可能エネルギーを重視し原発ゼロをめざすとのこれまでの主張は、河野の首相就任が不安視される一因となっていた。 河野氏は最近、円安を阻止のために日本銀行が金利を上げるべきとの主旨の発言を行った。日本銀行の正常化を支持する姿勢ではあるが、日本銀行の独立性を尊重する姿勢を欠いている面があるのではないか。 他方で、河野氏の政策手法には強引な面があるとも指摘される。たとえば河野氏が進めるマイナンバー行政では、2024年12月に紙の保険証の新規発行をやめ、マイナカードに保険証機能を載せた「マイナ保険証」に原則移行すると決めたが、これには強引との反発もある。また、防衛相時代に地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備断念を事前の十分な根回しなく突如発表したのも強引だったとの評がある。
上川氏、茂木氏、小泉氏、小林氏の各政策
上川氏は米ハーバード大卒の国際派だ。もし総裁選で勝てば、日本初の女性首相となる。上川氏は女性活躍に尽力してきたことで知られている。また法務大臣在任中には、16人の死刑執行に署名したことで、活動家らから非難を浴びている一方、高く評価する声もある。 茂木氏も米ハーバード大出身の国際派で外務大臣も務めた。最近、円安阻止のために日銀は金融政策を正常化させる方向性を明確にすべきだとの考えを示した。河野氏と同様に、この発言は、日本銀行の正常化を支持する姿勢ではあるが、日本銀行の独立性を尊重する姿勢を欠いている面があるのではないか。 また茂木氏は、日本でのライドシェア全面解禁を唱えており、日本政府に規制緩和を改めて促すなど、規制緩和重視派の側面をのぞかせている。 小泉氏は小泉純一郎元首相の次男であり、環境対策に積極的だ。再生可能エネルギーを推進し、石炭火力発電に対する政府の支援を批判している。タクシー運転手不足の解消に向けライドシェアアプリの導入を提言するなど、規制緩和重視派の側面もある。 小林氏は最近のテレビ番組で、「日本の経済力をどうやって高めるのかが課題だ」と話した。「経済力を高めることで技術力や防衛力が高まり、それによって外交力も高まる。外交力が高まれば日本の国益にかなうルール形成が可能になってまた経済が豊かになる」と強調する。経済力強化が外交も含めた国力全体の強化につながるとの考えだ。