セダンでEV、ホントに日本で売れる? BYDの新型車「シール」を考える
さらに、横浜には約8万点(!)の部品類を常備しているパーツセンターがあり、ドアやガラスからネジ1本にいたるまで、あらゆるアイテムの在庫を抱えているという。万が一、BYDのクルマが故障したり、不意に事故にあったりしてクルマの修理が必要になったとしても、本国からパーツが届くまでユーザーを待たせることなく、すぐに部品を用意できる万全のアフターサービス体制を整えているというのがBYDジャパンの説明だ。シニアアドバイザーは「日本国内にパーツセンターを構えているのは、他の新興自動車メーカーにはないBYDの強みです」と強調していた。
■アンチはいるかもしれないが… 輸入車というくくりでいえば、セダンはまだまだ衰えていない。そこに完成度の高いEVセダンを投入するとなれば、BYDの勝算はそれなりにあるのではないかと思う。ただ、EVそのものを毛嫌いしている人や、BYDが中国の企業であることをマイナスに捉えている人が一定数いるのも確かだ。その点について、担当者の考えは? 「確かに、EVについては『食わず嫌い』な人が多くいらっしゃいます。BYDでは、(ネット販売ではなく)実際に販売店を構えて、気軽にEVに試乗できる環境を整えれば、EVの魅力をより多くの人に伝えるられると考えています。また、我々としては中国企業ではなく、グローバル企業という意識で働いています。決して中国企業がダメということではなく、特定の国にとらわれないグローバルな企業活動をしているという意識なんです。ですから、『日本だから』とか『中国だから』という意識はなく、世界を見て仕事をしています」 クルマには整備、点検、車検などのメンテンスが欠かせないが、アフターサービス体制がしっかりとしていれば、どこの国のどんなクルマなのかはほぼ関係ない。むしろ、アフターサービスが充実しているブランドだということがわかれば、クルマを積極的に選ぶ理由にもなる。 BYDの日本事業に課題がないわけではないが、試乗と担当者へのインタビューを通じ、同社が今後、シールをブランドを代表する存在に育てあげるため、ほぼ完ぺきに準備を整えていることは伝わってきた。
■ 室井大和 むろいやまと 1982年栃木県生まれ。陸上自衛隊退官後に出版社の記者、編集者を務める。クルマ好きが高じて指定自動車教習所指導員として約10年間、クルマとバイクの実技指導を経験。その後、ライターとして独立。自動車メーカーのテキスト監修、バイクメーカーのSNS運用などを手掛ける。
室井大和