「送られてきて助かった」 見落としがちな災害時のトイレ問題 在宅避難推奨の区が携帯トイレを配布した理由とは
2024年1月1日の能登地震から約1年。地震をはじめ自然災害が少なくない日本では、日頃の備えが欠かせません。都市部などでは人口密度が高く、東京都をはじめとする自治体では、住宅の被害に支障がない場合には、避難所ではなく在宅避難が推奨されています。どんな備えが必要なのか、具体例として品川区防災まちづくり部防災課に、在宅避難についてお話を伺いました。 【写真】「送られてきて助かった」の声も 品川区が配布した在宅避難の必須アイテム 実際の写真 ◇ ◇ ◇
「自宅で安心・安全に避難生活が送れるのであれば、在宅避難を推奨」
――災害時の避難というと、地域の避難施設や避難所をイメージする人が多いと思います。文字通りの意味とは思いますが、改めて在宅避難について教えてください。 「在宅避難は、災害時に避難所ではなく自宅で避難生活を送ることを指します。過去の災害の避難所では、限られたスペースで多くの方との共同生活が求められるため、プライバシーの確保や感染リスクなどが課題となりました。そのため品川区では、自宅で安心・安全に避難生活が送れるのであれば、在宅避難を推奨しています。 自宅で避難生活を送るためには、建物の耐震対策や家具の転倒防止、ローリングストックによる食料や水、生活用品の備蓄など、普段から備えることが重要となります」
見落としがちなトイレの備え
――いろいろな自治体で10月頃より、在宅避難の物資やカタログを各戸へ配布しているようです。品川区では在宅避難での必需品として、携帯トイレを1人20 回分、全区民に無償配布しました。 「在宅避難を続けるためには、水や食料の備蓄だけではなく、トイレに対する備えも重要になります。災害時、断水や下水道の破損などによってトイレが使えなくなる可能性があるからです。食事や水は少しの間、我慢できたとしても、排泄を我慢することはできません。 自宅のトイレを無理に使用すると詰まって、汚物が逆流するなどのトラブルになるうえ、トイレが汚れて不衛生な状態だと、排泄物に含まれる細菌などから感染症を引き起こす可能性もあります。 また、過去の災害では、トイレに行く回数を減らそうと水や食事を控えた結果、心身の不調や脱水症をまねいたり、持病が悪化したりするなどの健康被害が報告されています」 ――水や食料など、さまざまな備えをしているなか、トイレが使えなくなることへの備えは、見落としがちかもしれませんね。 「災害時、トイレは大きな問題のひとつです。トイレに行く回数は1人1日5回といわれ、今回の配布では最低3日間、区民の皆様がトイレの問題に対処するため配布しました。 また、携帯トイレがお手元に届くことで、区民の皆様に災害時の問題を知ってもらい、災害への備えを考え、行動するきっかけとしていただければと思います。区民の皆様が安心して避難生活が送れるよう、同封した『しながわ防災ハンドブック』も一読いただき、災害への備えを考え、行動するきっかけにもしてほしいです」 ――配布後の反響などは、あるのでしょうか。 「Xでは、『買おうか検討していたときに送られてきて助かった』といったお声がありました。そのほか、災害時にトイレが使えない状況で、上階の住人が無理にトイレを使用してトラブルが起きる懸念をしていた方から、『啓発の意味で本当に良かった』などのお便りをちょうだいしています」