人は1週間にクレカ1枚分のプラスチックを食べてる? 「海洋プラごみ問題」 課題と解決策を調査した
私たちの生活に欠かせないプラスチック製品。近年、海に流れることで発生する「海洋プラスチック問題」がたびたび話題となっていますが、その解決に向けて画期的な素材が開発されています。カネカ Global Open Innovation企画部・主任の宅佑奈さんに話を聞きました。 【写真】土でも海でも分解される新素材 ☆☆☆☆ 環境問題解決の糸口になると注目されているのは、カネカ生分解性バイオポリマー「Green Planet」。これまでの、プラスチックの代わりになる素材と言われています。 「石油から作られる従来のプラスチックに対して、Green Planetは植物油などのバイオマスが原料の素材です。自然界の海水や土壌に存在する微生物により分解され、酸素のある環境では最終的に炭酸ガスと水になります。これまでのプラスチックと同じように使うことができ、ホテルのアメニティや買い物袋、食品包装・緩衝材などに需要を展開。大手コンビニチェーンのストローやカトラリーにも採用されています。土の中だけでなく、これまで難しかった“海水中での生分解”を実現できたこともこの素材の特徴であり強みです」(宅さん) 実際、海洋プラスチックごみは私たちの生活にどのような影響を与えるのでしょうか? 「ある調査では、毎年800万トンのプラスチックごみが海に流れているという見解があります。今のままでは、2050年には海中に住まう魚の重量よりプラスチックごみの重量が大きくなると言われています(※1)」(宅さん) WWF(世界自然保護基金ジャパン)の発表によれば人は1週間になんとクレジットカード1枚分、約5グラムのプラスチックを摂取しているのだとか(※2)。生活するうえで無くてはならないプラスチックですが、海に流出すると環境だけでなく我々の健康にも影響を及ぼしかねないのです。 宅さんはカネカの今後の動きについて、「世界中で膨大な量のワンウェイプラスチックが使われており、その中でGreen Planetに置き換えられるものは2500万トンと推定しています。そのため、まずは2030年までに10~20万トンの生産能力を確保することが目標です。また、現在は植物油や使用済みの調理油(廃食用油)を原料にしていますが、CO2を直接原料として生産する新たな研究を進めています。原料をCO2に転換することで、温室効果ガスの削減にも貢献します。すでに、ラボレベルでは実現していて、国の補助金による支援も受けながら工業化に向けて取り組んでいます」と話していました。 ☆☆☆☆ 海洋プラスチックごみは、いまや世界規模でクリアすべき課題です。まずは環境問題やその取り組みについて知ることが、自然を守るための第一歩に繋がるのではないでしょうか。 (取材・文=迫田ヒロミ) 【参考】 ※1/WORLD ECONOMIC FORUM(2016) ※2/WWF『No Plastic in Nature: Assessing Plastic Ingestion from Nature to People 』(2019) ※ラジオ関西『Clip』2024年10月23日放送回より
ラジオ関西