<女子BOX世界戦>柴田の薄氷V4戦に見えた王者の勇気と挑戦者の涙
女子ボクシングのIBF世界ライトフライ級タイトル戦が13日、後楽園ホールで行われ、王者の柴田直子(34歳、ワールドスポーツ)が、同級6位のマリア・サリナス(26歳、メキシコ)とフルラウンド(10回)を戦い、三者三様のドローで4度目の防衛に成功した。ホームタウン・テジションを考慮すると、ドローも順当だったが、試合後、判定を不服としたサリナス陣営は、IBFに試合ビデオを添えて提訴する意向を表明、再戦を熱望した。
10ラウンドを終えると、まず最初に挑戦者のメキシコ人がセコンドに肩車をされてリングを一周した。続けて柴田も、菅原トレーナーに肩車されたが、どこか、その表情は晴れなかった。 「どっちが勝っているのか。自分では判断がつかず、わからなかった」 読み上げられたジャッジの一人目は、96-94で柴田、もう一人は96-94で逆にサリナス、運命の3人目は95-95のドロー。三者三様のドローで薄氷の4度目の防衛となった。 その瞬間、勝利を確信していたサリナスは、悔しさの余り号泣した。 控え室に帰っても、挑戦者陣営の怒りが収まらない。 「ジャッジに勝利を盗まれたわ。私が7ラウンド、柴田が取ったのは3ラウンドだけ。試合が終わった私と柴田の顔を見比べれば、どちらが勝ったか明らかでしょ」 サリナスは、早口のスペイン語をまくしたてた。 サリナスのマネージャーは、さらに「この試合のビデオをIBFに提出して提訴し、再戦を訴える。また必ず日本に帰ってくる」と、正式に抗議行動を起こすことを明らかにした。 柴田は、8ラウンドにバッティングで頭を切られ、試合後も血が止まらず、医療用のホッチキスで応急処置をして包帯で頭をグルグル巻きにされて控え室に戻った。 「こういう展開は想定していたけれど、スピードがありましたね。パンチは硬いとは思わなかったけれど、藤岡さんの次くらいパンチ力もありましたね」 序盤は、サリナスのパワーと勢いに圧倒された。サウスポースタイルからブンブン左右のフックを振り回してくる。しかも、柴田陣営が、練習でチェックしていたよりスピードがあった。来日時は、3.5キロオーバー。重ね着をしての練習でごまかされていたという。 「スピードがありましたね、振り回してくるのを2つ外して、その打ち終わりに右を合わせる作戦だったが、圧力に押されてしまった」と斎田会長。受身になった。ガツガツとパンチをもらい、そこに「前半は消極的になるという悪い癖も出て」(柴田)、ジャッジは3人共に3ラウンドまで揃って挑戦者を支持した。その3ラウンドには、強烈なフックをモロに顎にヒットされ、コーナーに帰ると「効きました」とつぶやいたという。