エアクリにマフラー交換で簡単にパワーアップ! それならなんでメーカーは最初からやらない?
エアクリーナーとマフラーの交換でパワーが上がる理由
まずエアクリーナーを交換するとどんな変化が起こるでしょう? エアクリーナーとはその名のとおり、吸入する空気からゴミやホコリを取り除くフィルターです。ゴミやホコリという異物を吸って燃焼させると、そこだけ燃焼に不完全な部分ができてカーボンなどの堆積物となり、燃焼を妨げるばかりか、エンジンの寿命を縮めてしまう原因になります。 そのため純正の設計では目の細かいエレメント(フィルターのコア部分)を使用して、極力異物の混入を防いでいるわけですが、その反面、吸入の抵抗になってしまうので、基本的には除去性能が上がるほど吸い込む効率はよくありません。 そのエレメントをもっと目の粗いものにして、吸い込む効率を上げてやろうというのが「吸気チューニング」と言われているものです。 一方のマフラーの場合はどうでしょう? 純正のマフラーは、周囲の環境への負荷を減らすために、できるだけ排気音を抑える構造になっています。純正マフラーの多くはサイレンサーと呼ばれるタイコ部分に幾つもの仕切りを設けてあり、その仕切りを排気が抜けるときにエネルギーを奪うことで音量を低くしています。 エネルギーが奪われるということは、音のエネルギーとともに運動のエネルギーも減少しているということで、排気の勢い=パワーが奪われていることになります。 つまりは抵抗になっているので、排気の効率から見たら低下させられているということになるのです。 その抵抗をできるだけ取り除いて効率を上げつつ、排気の音量を常識的な範囲に留める設計で作られているのが社外品のマフラーで、そういう効率のいいマフラーに交換することを「排気チューン」というわけです。
メーカーが効率優先のエアクリーナーやマフラーにしない理由
では、高い技術力をもつメーカーがそういった効率のいいエアクリーナーやマフラーをなぜ最初から装着しないのでしょうか? その答えは、優先しているのがパワーや迫力のある音ではないからです。 いろんな人が運転して、いろんなシチュエーションの道を走行する市販車では、それを取り巻く周囲への配慮が重要な課題です。社会的な責任のある大企業が販売するクルマが、誰かの迷惑になる状況は避けなくてはなりません。 なので、音量はできるだけ控え目にしないとならないでしょう。 耐久性と信頼性の高さも重要です。クルマはおおむね100万円以上する買い物ですから、故障などのトラブルは大いにマイナス評価となります。なので、吸気の効率を優先するよりも、できるだけ異物を取り除く安心度を優先させているのです。 そして意外に重要なのが、ドライバビリティ(運転性)の維持、向上です。 市販車はいろんな人が運転するので、クセがなく操作しやすいことが求められます。具体的には低回転からしっかりとトルクが出始めて、そこから急激な変化がなく回転が上昇するエンジン特性が運転しやすいといわれています。 ここで重要になるのが、吸排気の適度な抵抗なのです。 エンジンというのはその仕組み上、低回転では吸入の勢いが低く、高回転では逆に高くなります。高回転では勢いに沿って多くの空気が吸い込まれるので、それを妨げないような広い通路が最適です。低回転ではその逆で、低い勢いでも適度な流速が得られるように狭い通路が最適となります。つまり、どちらかを優先させると、逆が悪影響を受けてしまうのです。 市販車の多くは街なかで多用する低い回転域でもっとも扱いやすくなるように設計されています。つまり、その回転域で適度な流速が得られるように、あえて吸排気の通路を細めに設定しているんです。