<一歩一歩・龍谷大平安センバツへの軌跡>/上 負けられない府大会、3位決定戦へ 準決勝で大敗、どん底に /京都
残酷な光景だった。失点が止まらない。 2022年10月1日の、高校野球秋季府大会・準決勝。龍谷大平安は、最近2年間で3回甲子園に出場している強豪・京都国際と、わかさスタジアム京都で相対した。 先発の桑江駿成(2年)が10安打を浴びながらも七回途中までなんとか試合を作り、3点を追う展開で迎えた八回表の守り。京都の高校球界をリードする存在に伸長しつつある相手打線の圧力に、背番号「1」の左腕・伊礼徳風(2年)ら2番手以降の投手陣が耐えられなかった。長打、単打、四球、バント安打、四球。2死をとっても四球、長打、単打……。この回だけで左右4投手が登板したが、6安打、4四球などで9点を奪われ、4―14でコールド負けを喫した。 新チームとなって初めて迎える公式戦の府大会は、順調すぎるほどの滑り出しだった。初戦となった2回戦から9―0、10―0、9―0ですべてコールド勝ち。準々決勝は、甲子園出場経験のある京都外大西、福知山成美を破って勢いに乗る連合チームの宮津天橋・丹後緑風という予想外の相手。府北部の期待を一身に集め、判官びいきの応援も気になる。龍谷大平安は体調不良の原田英彦監督に代わって川口知哉コーチが指揮を執り、接戦になれば球場がどんな雰囲気になるか分からない、未知の要素に満ちた試合だった。だが三回までに5点を奪い、桑江が2安打完封。10―0の六回コールド勝ちで、危なげなく最初の難関を乗り越えた。 4試合連続無失点で抑えただけに、準決勝の大敗はショックが大きかった。原田監督も「面白くない。投手がただ投げてるだけで、打者と勝負していない」と苦笑いを浮かべるしかなかった。 昨夏の京都大会の経験者は、実質的に主将となった遊撃・山口翔梧(2年)のみ。現メンバーでマウンドに立った投手は一人もいない。チームとしての経験不足から、どこかでもろさを露呈する可能性は分かっていた。甲子園を経験した中心選手が残る京都国際とは、試合の勘所を感知する力が大きく違っていた。 それでも22年は、2年に1回、府大会3位チームに近畿地区大会出場の権利が与えられる年。センバツ出場へ道を開くため、3位決定戦を勝つしかない。試合前夜、7、8人のバッテリー陣と川口コーチが集まってミーティングを開いた。強敵相手に何が足りないのか、誰がどう投げれば勝てるのか。話し合いは1時間以上も続いた。一気にどん底へ落ちたチームの反転攻勢が始まろうとしていた。【矢倉健次】 ◇ センバツ出場回数の全国最多記録を更新し、4年ぶりの甲子園に臨む龍谷大平安。復活に向けて一歩一歩前進していった昨秋からの軌跡を振り返る。 ……………………………………………………………………………………………………… ▽2022年秋季府大会2回戦 洛南 0000000=0 龍谷大平安 104301×=9 (七回コールド) ▽同3回戦 亀岡 00000=0 龍谷大平安 34003=10 (五回コールド) ▽同4回戦 菟道 0000000=0 龍谷大平安 011061×=9 (七回コールド) ▽同準々決勝 龍谷大平安 203113=10 宮津天橋・丹後緑風 000000=0 (六回コールド) ▽同準決勝 京都国際 20100119=14 龍谷大平安 00020002=4 (八回コールド) 〔京都版〕