〈目撃〉奇妙な深海生物を一挙に100種以上発見、「歩く」魚も、すべて新種の可能性
そこは海のオアシス
研究チームは既知の海山6つに加えて、これまで知られていなかった海山を4つ調査した。 「海山は独特の地形を持ち、その山でしか見られない生活様式に適応している種もいます」と、調査チームメンバーのジャン・マキシミリアノ・ゲラ氏は探査動画で述べている。ゲラ氏はチリ北部カトリック大学の博士課程に在籍している。 「そのため、この山脈や海山に暮らす種のほとんどは自然界で唯一無二のものであり、世界のほかの場所で見ることはできません」とゲラ氏は続ける。 「多くの意味で、海の砂漠の真ん中にあるオアシスのような場所です」と、セラネス氏は別の動画で説明している。 NOAAによれば、世界の海山は10万を優に超えているかもしれないが、人類が探査したのはその0.1%にも満たないという。商業漁業、底引き網漁、採掘など、人による有害な活動が禁止されている海山はもっと少ない。 幸い、今回探査した2つの海山はすでに海洋保護区の一部になっていると、セラネス氏は言う。
まだ始まりにすぎない
しかし、セラネス氏はもっと多くの海山を保護する必要があると述べている。今回の探査中、巨大なカイメン、ウミユリの大群、海底に暮らすタコをセラネス氏は目撃した。さらに、高さ約3メートルの巨大なトクササンゴを複数の場所で見た。 「海山にはそれぞれの個性があり、数カ所だけ保護しても、多様な動物たちやその生息地を効果的に保護することはできません」 主任研究員のエリン・イーストン氏も、海山に生息する動植物の多くはほかの場所にいないため、特に脆弱(ぜいじゃく)だと訴えている。イーストン氏は米テキサス大学リオグランデバレー校の生物海洋学者だ。 そして、100を超える新種は1回の探査としては大きな収穫だが、まだ始まりにすぎないと研究チームは強調している。 「ROVを海に送り込んで見られるのは、ROVが通過する約2キロの範囲だけです。海山の巨大さに比べれば取るに足りません」とセラネス氏は話す。 次の探査が行われるまで、まだ発見されていない多くの新種が隠されたままになる。「(これらの深海生態系について)すでにわかっていることから、その保護は正当化できますが、まだわかっていないということも、その保護をさらに正当化します」とセラネス氏は述べている。
文=Ashley Balzer Vigil/訳=米井香織