自殺した26歳医師は『100連勤・月200時間超の時間外労働』 1年半以上がたつも病院側から説明はなく...「どうすれば息子の死に向き合う態度をとってくれるのか」遺族が院長らを提訴
晨伍さんの自殺前…別の専攻医も過重労働を訴える「このままでは患者さんの命にかかわる」
しかし、過重労働に苦しんでいたのは晨伍さんだけではなかった。私たちは病院の内部文書を独自に入手した。実は、晨伍さんが自殺する1年前の2021年5月、別の内科の専攻医5人が病院幹部に過重労働を訴え、業務改善を要望していたのだ。 【内部文書より】「4月の専攻医の平均残業時間は凡そ100時間を超えていたと考えられます。検査漏れも多くなってきており、このままでは患者さんの命に係わると考えられるので業務緩和をよろしくお願いいたします」 この時の音声記録も残されている。 (別の専攻医 ※音声記録より)「実際働いてみると『うっ』て思うところがあり、どうしたらもっと良くなるかなって。業務緩和をよろしくお願いいたします」 病院幹部は働き方の改善を検討するとしながらも「医師の業務の半分は勉強だ」などと話した。 (病院幹部 ※音声記録より)「ちょっとだけ言いたいことは、僕らも昔の世代の人間やから意識が違うんやけど、主治医していると『きょうあの人どうなったかな』って見に来たいことってあるやん。主治医として心配、あるいは興味として。自分の入れた薬でカリウムがどれだけ上がっているか下がっているか見たいやん。半分は勉強やん、自分を鍛えるための」 専攻医らは同じ文書を示して具院長にも掛け合ったが、院長が対策をとった形跡はなく労働環境は変わらなかったという。
労基署が病院の運営法人や院長らを書類送検 記者が院長を直撃取材すると…
そして去年12月、遺族の刑事告訴を受けた西宮労働基準監督署は、病院の運営法人「甲南会」と具英成院長らを、晨伍さんに規定を超える長時間労働をさせた疑いで書類送検した。 (晨伍さんの遺影に向かって話す母・淳子さん)「お母さん本当に悪かった。こんな刑事告訴されるような環境の中で働いていることを全然知らなくて」 (母・淳子さん)「どうして亡くなったのか、ちゃんと向き合って謝罪されることが全ての方のためになることだと思います」 書類送検を受け、改めて病院に取材を申し込むと、カメラでの対応を拒否。「8月の会見から認識は変わりません」とコメントした。専攻医の過重労働を知っていたのに対策をとってこなかったのではないか。去年12月27日、書類送検された具院長に直接問うた。 (記者)「書類送検の受け止めは?」 (具院長)「申し訳ないけれど、すみません。しかるべき時に、またお話しさせてもらいます」 (記者)「過重労働を院長も把握していたんじゃないかというのは?」 (具院長)「ノーコメントです」 (記者)「2021年に専攻医が過重労働を訴えていたが、それについて認識はありましたか?」 (具院長)「ありません」 (記者)「ないですか?」 (具院長)「ええ。記憶にありません」 質問にほとんど答えることはなく、その場を後にした。