自殺した26歳医師は『100連勤・月200時間超の時間外労働』 1年半以上がたつも病院側から説明はなく...「どうすれば息子の死に向き合う態度をとってくれるのか」遺族が院長らを提訴
100連勤・月200時間超の時間外労働 労基署は労災認定
晨伍さんを自殺に追い込んだのは病院での働き方だったのではないか。遺族の求めに応じて病院は弁護士らによる第三者委員会を立ち上げ、晨伍さんの勤務実態などを調べた。ところが、その結果について「プライバシーの保護」を理由に遺族に説明しなかったという。こうした対応に、自身も医師で病院との窓口になっていた晨伍さんの兄は不信感を抱いている。 (晨伍さんの兄)「(院長は)通夜以降一度も会ってくれたことはないですし、説明をしてくださったこともなくて、私たち遺族は何も知らされないまま」 病院から何の説明もない中、遺族は晨伍さんの死について真実が知りたいと労災を申請。西宮労働基準監督署は去年6月、「極度の長時間労働により精神障害を発症し自殺した」として労災認定した。 労基署が調べた晨伍さんの「労働時間集計表」を見ると、自殺する前の1か月の時間外労働は207時間50分。過労死ラインとされる100時間を大きく上回る。休みなく100日連続で勤務していたこともわかった。
病院は記者会見で過重労働を否定 院長は「自己研鑽」の言葉を繰り返した
晨伍さんの死から1年以上がたった去年8月、病院は遺族に説明をしないまま記者会見を開いた。病院のトップ・具英成院長は労基署が認定した過重な労働を真っ向から否定した。 (具英成院長)「労基署の場合は(タイムカードの)打刻の時間を中心に時間を推定しているんだと思いますけど、病院として過重な労働を負荷していたという認識はございません」 晨伍さんが長時間病院にいたことは認めたが、2022年4月に実際に残業していたのは30時間30分だと主張した。労基署が認めた200時間とはかけ離れたものだ。 では、この差は何だと言うのか。会見の中で繰り返されたのは「自己研鑽(じこけんさん)」という言葉だった。 自己研鑽とは、自分の能力を磨くために自ら学習をしたり経験を積んだりすることだ。つまり、晨伍さんは学会準備や医学の学習のため、自らの意思で長時間病院に残っていたのだという。また、他の医師の勤務状況についても言及した。 (具英成院長)「当院では比較的、時間内に仕事を済ませて帰る方が多いんじゃないかと。(自殺は)この病院だから出たという問題かどうかわからないんじゃないでしょうか。私もわかりません」