ホンダ「CX500ターボ」で知る「ターボ」の目覚め ミドルクラスの未来予想図
ターボチャージャーを装備した世界初の量産バイク
2024年のEICMA(ミラノショー)で、ホンダからサプライズ的に電動ターボ付きV型3気筒エンジンのプロトタイプが展示されました。開発途中で近年中にも発売されそうな雰囲気に注目が集まっています。そんな話題のターボエンジンですが、そもそも「ターボってなんですか?」というバイクファンは多いのではないでしょうか。簡単に言うと、空気を圧縮してエンジン内により多くの混合気(=酸素とガソリン)を送り込むコンプレッサーシステムで、その動力はエキゾーストパイプの排気圧力を利用しています。 【画像】ホンダ「CX500 TURBO」(1981年型)の詳細を画像で見る(11枚)
歴史的には第2次世界大戦時の航空機に、そして1970年代からは量産の乗用車にも採用されています。大幅なパワーアップが可能なため、当初はスポーツカーに組み込まれました。その時代を知る世代は「ターボ=速い・凄い・カッコ良い」というイメージを持っているかもしれませんが、現在のターボは軽自動車にも多く採用されるほどポピュラーになっています。 一方、バイクは1980年代に国内4メーカーからターボ付きエンジンのバイクが市販されました。当時はまだターボを生かす技術が発展途上だったことや、メーカーが期待したほどの人気を得られず、どのターボバイクも数年で生産を終了しています。 その中で、世界で初めてターボ付きエンジンを採用した量産バイクが、1981年にデビューしたホンダ「CX500ターボ」です。500という車名から分かる通り、排気量は500ccクラスでした。 ターボを搭載すれば燃焼室の中により多くの混合気を詰め込めるので、排気量が大きなエンジンと同じような燃焼出力が得られます。「CX500ターボ」もリッターバイクに匹敵する最高出力82PSと最大トルク8.1kg-mを発揮しています。ベースになった「GL500」の48PSと4.1kg-mから大幅に向上しています。
良いことずくめに聞こえるターボですが、空気を圧縮するために排気圧力でタービン(空気の流れを回転運動に変えるための羽付歯車的な装置)を回しているため、当時の技術ではエンジン回転数が上がって排気圧力が高まるまでのパワーは普通のバイクと同じでした。 ライダーがパワーを欲しい時のアクセル操作に応えられるよう、ベースエンジンには「GL500」のVツインが選ばれました。排気されてすぐの場所にターボのコンプレッサーを配置でき、できるだけ早いアクセルレスポンス(=ターボの空気圧縮充填によるパワーアップ)を実現できるからです。 ホンダはこの「CX500ターボ」を単なるスポーツバイクではなく、ターボチャージャーによって中間排気量車の可能性を高めるプレミアムバイクと位置付けました。当時の最新技術をふんだんに盛り込み、エンジンはコンピューター制御のフューエルインジェクションで始動時や標高の変化の補正を行ないます。ブースト圧力と点火タイミングの制御や診断システムなども装備していました。