『宙わたる教室』小林虎之介×南出凌嘉が紡ぎ出す真っ直ぐな思い 心を支える“無重力空間”
要(南出凌嘉)にとっては部室が“無重力空間”だった
もしかしたら、あの部屋も要にとっては、弟のことや馴染めない学校生活から逃れられる無重力空間だったのかもしれない。手を動かして問題を解決する達成感で心がフワッと軽くなるが、弟のせいで荒れた家に帰れば、またすぐ現実に引き戻されてずっしり重たい気持ちになる。自分が作ったゲームで喜んで遊んでくれた弟が変わっていくのが怖くて、見ないようにした。だけど、誰かを殴る拳の痛さを知っている岳人の言葉で要は弟が変わっていないことを知る。弟が暴れたことで家族は体や心に傷を負ったが、きっと一番傷ついたのは弟自身だ。だけど、どうしても感情を抑えられなくて、自分の心も家族の心も守るために日がな一日部屋にこもっているのだろう。 要にとっての部室や夜のカフェ、弟にとっての自室、あるいは佳純(伊東蒼)にとっての保健室。多くの人が、いろんな重たさからひと時解放され、心を楽にすることができる無重力空間を持っている。要がカスだと吐き捨てた学校も岳人にとっては、そういう場所だった。一方で、私たちは人間関係という重さからは完全に逃れることができない。その重さに押し潰されることもあるが、岳人が藤竹の思いに応えたいと思ったように、前に進むきっかけを与えてくれることもある。要の弟もまた、外からの呼びかけに応じて閉じこもっていた部屋から一歩を踏み出した。 一方、突如大学を去った藤竹が定時制の教師をやっていることを知った石神(高島礼子)は今のところ不穏な空気を醸し出しているが、科学部と彼女のエンカウントは果たして前者となるか、後者となるか。
苫とり子