イギリス首相になくなった?「解散権」を憲法の視点で考える
日本でも「任期固定法」は可能?
さらに、解散権を制限するとして、その実効性をどのように図るか、という問題があろう。従来の学説が主張してきたような、不当な解散論に基づいて慣例が形成されていくことへの期待は、実際政治には定着せず、有効な主張とならなかった。 ただ、日本で、議会任期固定法のような法律を制定することが憲法上許されるかどうかは明らかではない。なぜなら憲法上、内閣に自由な解散権が認められるということであれば、国会の法律でそれを制限することは、憲法上の権限を下位法で制限することになるからである。 どの国でも、政治のルールの見直しは利害が対立し容易なことではない。それでも、諸外国では粘り強い議論によって議会政治、民主政治の仕組みを進化させる努力が行われている。解散権をめぐる議論もその1つである。今回のイギリス下院の解散・総選挙の争点はもちろんEU離脱に関する諸問題ではあるが、解散権のあり方についても考えるきっかけにしていただければ幸いである。
--------------------------------- ■曽我部真裕(そがべ・まさひろ) 専門は憲法、情報法。2001年京都大大学院法学研究科講師、准教授を経て2013年から教授。パリ政治学院などで客員研究員や客員教授を務めた。放送倫理・番組向上機構(BPO)放送人権委員会委員。著書に『反論権と表現の自由』(有斐閣)など