W杯で快進撃を起こしている5か国にある共通点とは?
番狂わせはあるか?
南米のチームでは珍しく組織を主体として、その中で選手個々が輝きを放つ。水沼氏はチームの心臓を担うマルセロ・ディアス、チャルレス・アランギスの両ボランチの運動量と献身性を称賛する。「スペイン戦の先制点を決めたのはストライカーのバルガスだけれども、ボールを持った選手を後方からどんどん味方が追い越し、人数をかけてペナルティーエリア内へ侵入していったそれまでの攻撃を抜きには語れない。特にアランギスは前へ、前へと常に攻撃に絡んでいく。そうしなければ、ワールドカップの舞台で相手ゴールをこじ開けることはできない。リスクを厭わないアランギスのプレースタイルを、ぜひとも日本のボランチたちには見習ってほしい。チリとメキシコは、体格的にも日本と大差はない。彼らの全員サッカーというものが、あらためて見直されるべきなのではないだろうか」。 決勝トーナメント1回戦は開催国ブラジルとチリの激突で幕を開け、日本時間30日未明にはオランダとメキシコが顔を合わせる。史上最多を更新する6度目の優勝を義務づけられたブラジルをチリが下せば、まさにワールドカップの歴史に残る番狂わせとなる。 両者はこれまでに78回も対戦し、ブラジルが58勝13分け7敗と圧倒的な成績を残している。チリの最後の白星は2000年8月のワールドカップ予選にまでさかのぼるが、昨年に行われた親善試合は引き分けとブラジルの辛勝という結果が刻まれている。水沼氏もキックオフを楽しみにしている。 「南米予選などで積み重ねられてきた苦手意識や力関係はあるような気がするけれども、チリが身構えなければ非常に面白い試合になるのではないか。スペイン相手にあれだけのサッカーを演じたわけだからね。チリとメキシコ、コスタリカ、オランダと、あとはアメリカに共通して言えることは、自分たちの実力を客観的に分析できている点。だから頑張り抜けるし、見ている人たちを感動させられると思う」。 負けた時点でブラジルの地を去ることを余儀なくされるノックアウト方式の決勝トーナメントは、90分間で決着がつかない場合は15分ハーフの延長戦が行われ、それでも同点の場合はPK戦へともつれ込む。地球の裏側で繰り広げられる熱戦に誘われる眠れぬ夜は、これから佳境を迎える。 (文責・藤江直人/スポーツライター)