ユナイテッドアローズ松崎善則社長「若者に選ばれる企業に、新販売員評価制度も導入」
若手の活躍で会社の高齢化を防ぐ
―2024年のファッション業界はどんな一年になりそうですか? 年始から震災もあってかなり不安定な一年の始まりになってしまいました。物価高や原料高は続くと思うので、消費意欲をどう喚起していくか。今年に限ったことではないですけど、やはり値上げを伴わなければいけないので、付加価値をどう創出するかがこれまで以上に重要な一年になりそうです。 ―値上げは避けられない。 もちろん、ただ値上げをするわけでありません。商品価値を高めながら適正な値上げをしていくことは、非常に大事なことだと最近は思います。そうしないと、国が求めている賃金のベースアップは図れないですし、収入も増えていかないと経済が回らない。その代わり、販売件数は減っていくんだとは思うんですけどね。ただ、我々にとってはそこに勝機があると考えています。 ―2023年は本格的なアフターコロナを迎え、売上高の伸び率も高かったと思います。2024年は本質的な実力が試される一年にもなりそうですが、さらに飛躍していくための重点課題を教えてください。 先ほど申し上げた「付加価値を高める要素」も様々ですが、「接客の付加価値」がやはり重要になっていくと思います。それだけではなく、自社ECやアプリの操作性といったデジタルに関わるところを改良することで、より利便性が高く、ストレスの少ない買い物体験を提供できるように並行して地道に進めていきます。 もう1つは、大きめの仕掛けが必要なのかもしれない、というのは最近考えています。要は、付加価値の前にある企業価値をどう高めていくかですよね。「いつもユナイテッドアローズは面白いな」と思っていただかないといけない。若年層の活躍を創出する機会もそうですし、そこから生まれてくるアイデアや方法を具体化していくことが、会社としての若さを保つことにつながるのでないかと思っています。 ―今年1月に立ち上げた次世代向け新ウィメンズブランド「アティセッション(ATTISESSION)」も25歳の若手社員をディレクターに起用していますね。若年層への訴求は引き続き強化していく方針ですか? そうですね。次世代に向けた取り組みを強化する1年になりそうです。それがすぐ実績になるかというと、やはり少し時間はかかるとは思います。本丸は、既存事業の顧客化を推進してきちんと客単価を上げながらベースを作っていくことにあります。 ―以前、コスメの方で「ユナイテッドアローズを知らない世代に売っていきたい」というお話を聞きましたが、知らない世代がいることに驚きました。 当社の新入社員の中にも「ユナイテッドアローズは知っているけど買ったことはない」という者は結構いるんですよ。衝撃的ではあるのですが、これは手に取ったことがないという層に向けた一助にはなるのかなと。 ―若手人材の早期退職に課題感を感じている企業も多くある中で、人事制度を見直されたり、若手社員をディレクターに起用するなど、若手に寄り添う姿勢が印象的です。 いまの若者は給料も大事ですが、会社への貢献度や活躍できる風土があるかなど、やりがいを重視する方が多いですよね。昔みたいに5年、10年やりたいことを我慢するような時代じゃないですから。 ―松崎社長はユナイテッドアローズに入社されて25年です。ここまで続けてこられた秘訣は何かありますか? なんでしょうね、わからないです。寝て起きたら今って感じです(笑)。辞めてまでやりたいことが見つからなかっただけなんです。 ―今年4月入社の新卒採用は何名ほどいるのでしょうか? 130人ぐらいですね。多いときは200人近くいるんですけど。それも女性が圧倒的に多いです。これも結果的なのですが。 ―男性はどこにいっているのでしょうか......(苦笑)。 アパレルも昔のような成長産業ではなくなってきたということなんだと思います。目指す人が増えるように、キャリアアップのロールモデルをたくさん作って働き方を示していかないといけないですね。 ―新規プロジェクトが話題を集める一方で、「コーエン(coen)」は苦戦が続いています。打開策は? コーエンはユナイテッドアローズから半歩遅れて不採算の整理を行ったので、既存店比較だとトップラインとしては目減りしてしまっているんですが、昨年度に構造の見直しは終えたので、あとは商品のテコ入れがうまくヒットすればまた大きく成長できると思いますし、その準備はできています。コーエンはオフ要素が前面に出た商品構成なので、オンオフで着られるなどもう少しマルチなニーズに対応する商品構成になるように見直していけば、ある程度手応えは掴めるんじゃないかと。