農家のお母さんらが経営して20年 地場産だから愛される地域の「道の駅」
【北海道中札内村】年間来場者数約60万人は人口の約160倍。「安くておいしいから地元のリピーターも多い。夏には本州からキャンピングカーで毎年来る人もいて、店にお土産を持ってきてくれるくらい愛されている」。中札内村観光協会の休場龍さん(27)は、村の観光拠点「道の駅なかさつない」が多くの人から支持される理由をこう語る。 1996年8月に十勝4カ所目の道の駅としてオープン。来年は2005年の大幅リニューアルから20周年を迎える。国土交通省が道の駅を「ゲートウェイ型」と「地域センター型」の二つのタイプに類型化しているが、同駅はこれらを兼ね備えた、地域観光のけん引役であり地域の顔としても存在感を放つ、村にとって不可欠な拠点だ。 リニューアル4年目から13年連続で管内観光地・施設別入り込み客数でトップに。村内には六花の森などの観光スポットがあり、とかち帯広空港にも近接。08年11月には高規格道路の中札内インターチェンジが開設し、交通利便性の向上もあって、年間来場者はピークで75万人(15年)に達した。
■農家のお母さんが一念発起
底堅く支持されているのは、地元産品にこだわりと愛着を持ち、ここで発信し続けてきた経営者らの存在が大きい。その一人が、物産販売所「花水山(かすいさん)」内で「あんてぃー」を経営する道見ひろみさん(65)。村内で採れた旬の野菜が安く買えると評判で、中札内の卵を使用した「たまこがけごはん」(280円)などが人気だ。 村内で畑作農家を営む道見さんは、生産者の一人として農産物を提供しようと出店者説明会に参加。その時の担当者が帯広農業高校時代の先輩で「店をやってみないか」と誘われた。ちょうど村は帯広市との合併論議で揺れていた時期で、「村民が自立しなければ」との思いとも重なった。
経営は素人同然だったが、仲間4人の共同経営の代表に。本を読みあさり、家族旅行を兼ねて道内外の道の駅も視察した。物販の柱となる野菜や工芸品などで村内を回って協力を求めると、ほとんどの人が快く引き受けてくれたという。「店を始めることに迷いはなかった」と道見さんは振り返る。 本業の仕事もあり目の回る忙しさで、2年間あった準備期間はあっという間に過ぎた。開店後は客のニーズに応えるため、コーヒーやフライドポテトなどの軽食に加え、丼物やラーメンなど食事メニューも増やした。客の要望を聞き逃さない道見さんの姿勢が、店のファンを引き付け続ける魅力の一つになっている。