農家のお母さんらが経営して20年 地場産だから愛される地域の「道の駅」
■鶏皮で出汁をとる特製たれ
村内のカレー店を移転し、あんてぃーと共にリニューアルから入居した「千サルバトーレ12」。店はオーナーの深瀬宏記さん(62)、妻・実千代さん(53)、深瀬さんの姉の西本悦代さん(65)の3人で切り盛りする。村内産の鶏肉や枝豆などを使った「ピータン丼)」(600円)など、素材にこだわったメニューは20以上。 全ての丼メニューに西本さんが手作りする特製のたれを使用する。たれはしょうゆベースで、残った鶏皮で出汁をとることで味に深みが出るという。持ち帰りの人が冷めてもおいしく食べられるように、濃すぎない味付けなのが特徴だ。「メニューの基本は地場産であること。そうでなければ来て食べてもらう意味がない」。深瀬さんは強調する。
順調に見える同道の駅でも、昨年、そば店と焼き鳥店が閉店するなど空き店舗の発生や、需要が落ちる冬の集客など、課題は少なくない。 道の駅全体の魅力アップとさらなる施設周知に向け、16年度から道の駅を管理する中札内観光協会は、事務所を道の駅に移し、イベント開催に力を入れている。毎年10月に開催する「道の駅フェア」では通常の週末以上のお客が押し寄せる。今年は恒例の野菜詰め放題の他、6台のキッチンカーが並んだ。グルメだけはなく大道芸やポニー馬車、ワークショップなど、体験イベントにも力を入れた。
また、施設内にキッズスペース設置など、子育て支援環境の充実で魅力を高め、地元をはじめ近隣からの集客増も目指す。「三世代で楽しめる施設にしたい」と休場さんは力を込める。 既存店もソフト面での魅力向上と集客アップに努めている。千サルバトーレ12では、コロナ禍を期に週に一回、定休日を設けた。これが働き手の笑顔とゆとり、良い連携につながり、食事提供時間の短縮に成功。結果、「平日のランチに地元の人が来てくれることが増えた」(西本さん)。最近では、土日だけではなく平日の売り上げも伸びているという。 道見さんにとって、道の駅なかさつないは、「店は村民が活躍できる舞台のようなもの。私たちスタッフは演出」という。 あんてぃーの壁には生産者の顔写真が貼ってある。スタート時、27人だった出品者は、業者、個人、JAなど今では約90軒に。始めた頃は隙間のあった棚も、今では野菜の他、加工品や手芸品などでいっぱいだ。地域の支持が、台風災害やコロナ禍の厳しい経営環境を乗り越える支えとなった。 「披露する場をこれからも作っていきたい。体はしんどいけれど、畑も店も好きだから」。20年前の開店の日、初めてドアが開いた光景と希望に満ちた気持ちを、道見さんは今も大事にしている。(村瀬恵理子)