高校生のヘルメット着用義務化進む…自転車死傷事故の多さ背景、経済負担を理由に慎重な自治体も
県立高校で自転車通学時のヘルメット着用を義務づける動きが、広がっている。昨年4月の改正道路交通法で努力義務となったことを受け、全県立高を義務化したり、購入費用を補助したりする自治体も出ている。背景には、高校生は自転車通学が多く、自転車の死傷事故について年齢層別で最多となっている現状がある。一方、経済負担などを理由に義務化に慎重な自治体もある。 【表】九州・山口・沖縄の自転車乗車用ヘルメット着用率
対象者全員がヘルメット着用
1日午前8時過ぎ、山口県田布施町のJR田布施駅。駅から約2キロにある県立熊毛南高(平生町)の生徒たちは、改札口を出ると次々にヘルメットをかぶり、自転車で学校に向かった。
県教育委員会は、改正法施行を受けて県立高など69校に対し、自転車通学時のヘルメット着用を校則に明記するよう指示。今年度から着用を義務化した。
同高は2022年、自転車安全利用モデル校を県警から委嘱され、着用率は40%程度に上昇した。現在、全生徒の5割超にあたる自転車通学の生徒は、全員ヘルメットを着用している。
髪形を気にして以前は着用を敬遠していたという同高交通安全委員会副委員長の2年の生徒(17)は「今は自分の命を守るためにも、ヘルメットは欠かせないと感じている」と話す。
県教委の担当者は「過去には車との事故でヘルメットをかぶっていたため、軽傷で済んだという報告もある。今後も着用の徹底に努めたい」としている。
山口県と大分県、県立高校でヘルメット義務化
警察庁によると、19~23年の自転車乗車中の死者は1898人。うち、5割超が頭部に致命傷があった。一方、年齢層別の死傷者数は、高校生が含まれる15~19歳が各年とも全体の18%前後で最多だった。
読売新聞が22日までに九州・山口・沖縄の各県と政令市、県庁所在市の教育委員会に取材したところ、中学では自転車通学を許可している自治体の多くで義務としていたが、県立高で義務化しているのは山口、大分両県だった。
大分県では改正法施行前の21年4月から、過去に自転車通学途中の高校生が事故で頭を打ち、重体となったことなどから、県立高で義務に踏み切った。このほか、25年度からは熊本県が義務化を予定。既に今年度から、熊本工業高、芦北高などで先行している。