【ホラー漫画】「いたいよ、お兄ちゃん」10年前に亡くなった妹の残滓が呼び寄せるのは?殺人事件の真相はキーホルダーの中に【著者に聞く】
拝み屋の母を持ち、自身も後継者として活動する神田暁は、視えないものが視える。ある日、同級生が肝試しで持ち帰ったイルカのキーホルダーから、「いたい、いたいよ。お兄ちゃん」という残滓が視えて...?イータ(@378tkm)さんの拝み屋神田暁シリーズより「ナゲット15ピース3割引最強っていう話」を紹介するとともに本作の制作秘話を聞く。 【漫画】本編を読む ■10年前に亡くなった妹の残滓「いたい、いたいよ。お兄ちゃん」と呻いていて…? 暁とりうは、3割引きになっている期間限定のナゲットを買いに行った。そこで、同級生と会う。彼を見つめた暁は、「左ポケットに入っているやつ寄越せ」と言った。言われたとおりにポケットを探ると、本当に入っていた。「なんだ、このピンクのイルカ…」と友人は驚くと「安易に肝試しに行くなよ」と忠告。何も話していないのに、暁には「視えた」のだ。 ピンクのイルカのキーホルダーから「肝試しスポット」となってしまった、事故物件の家が視えてくる。床に倒れた妹。「いたい、いたいよ。お兄ちゃん」と呻く姿。残滓となって現れた、妹の指先に触れるとーー? 小さいころから漫画家になりたかったというイータさん。本作はシリーズもので「いろんな漫画を描いていましたが、大人になって『暁』というキャラクターを思いついたのがきっかけで、このシリーズを作っています」と、拝み屋神田暁シリーズのはじまりを話す。 シリーズ2作目は、ある事故で一家離散した話を描く。「現実の世界では同じような事件が多発しており、様々な事件にインスピレーションを受けて作成しました。私はホラーを通して人間ドラマを描きたいのですが、ラストでひっくり返る展開を描くよう心がけているので、作品の終わりはあのようになりました。またナゲットのセリフはなんとなく書いてたんですが、描いている途中で、このセリフは伏線回収になるかもと思い、最後にあのセリフでまとめました。何気ないセリフが伏線を回収するというのは描いていてとても気持ちいいです」と制作の経緯を聞くことができた。 神田暁シリーズは「親子二世代にわたる構想」で、主人公の神田暁は、拝み屋の家系の次期当主。本作では、身の回りで知り合った人の抱える霊を祓っていく。「暁は先祖代々拝み屋の家系に生まれたので、家業として祓っています。まだ学生なので、今は家事手伝いですね。母親も拝み屋です。現在の当主は母親ですが、彼が成人すると当主交代になります。暁は今17~18歳なので、2、3年後の設定ですね」(イータさん) 暁の除霊は「視えるものを祓う」というよりも「浄化」しているようにみえるが、「拝み屋とは拝む人のこと、つまり呪文を唱えて霊を祓う人のことです。霊媒師とは霊を媒介する人、つまり霊を憑依させてなにかお告げをする人(イタコなど)です。口寄せともいいます。暁は口寄せをすることもできますが、基本的には霊を祓う人なので、わたしは拝み屋の方を使っています」と、拝み屋の設定についてイータさんは話す。 ちなみに暁は、「悪いもの(成仏する気がないもの)は、吸い取って体の中に入れて無理やり除霊します。彼の能力で体内で悪いものを綺麗にして、超クリーンな屁として排出されるため、実は暁は人知れずスカしっぺをしています。無音無臭なので誰も気づかないのです。真剣な設定です」と、おもしろい体内浄化システムについても教えてくれた。 イータさんが目指すのは、「ファンタジーと現実の間にあるようなホラー」だとか。また、特徴として「呪文が唱えられない能力者」という設定も加わる。「あえて能力だけで脳筋アタックするようなお祓いにこだわっています」という基本設定がベースにあるため、怨霊とのド派手なアクションシーンもなければ、除霊の儀式もない。そこにあるのは、「魑魅魍魎(ちみもうりょう)を通してみえてくる『人間とは何か』「命とは?』を考える、ホラーヒューマンドラマ」だと話す。 今後の構想は、「暁は17歳の高校生で『拝み屋一族の次期当主』というスタンスだったんですが、最新話から当主になり、歳も20歳にマイナーチェンジしました。次の話で彼が3年間でいかに進化したか、描く予定です」とイータさん。シリーズ化を含め、書籍化を望む声も届く。 取材協力:イータ(@378tkm)