【海外試乗】MVアグスタ「エンデューロ・ベローチェ」本気のアドベンチャー魂を宿したエレガントな実力派
MVアグスタから本格派アドベンチャーモデル「ENDURO VELOCE(エンデューロ・ヴェローチェ)が登場。国際試乗会が開催されたイタリアのサルディーニア島からモーターサイクルジャーナリストのケニー佐川がレポートする。 【画像】MVアグスタ エンデューロ・ベローチェをギャラリーで見る(19枚)
【マシン解説】
────────── ダカールラリーの覇者をオマージュした美しき野獣 ────────── MVアグスタは“走る宝石”にも例えられるイタリアの名門ブランド。100%イタリア製の世界一美しいバイクを自負し、MVの栄光の歴史に裏打ちされたパフォーマンスとテクノロジーを詰め込んだ高品質なプロダクトを誇っている。 ’50~’70年代にはロードレース世界グランプリで最高峰500ccクラスをはじめ各カテゴリーでタイトル量産するなど黄金時代を築いてきた。その後2輪事業から一時撤退するも、同じイタリアの新興2輪メーカーだったカジバの下でブランドは生き残り、紆余曲折を経て現在はKTMグループの傘下に入ったことで生産体制も強化され、開発も一気に加速している。 さて、「エンデューロ・ベローチェ」だがVELOCEはイタリア語で「速い」の意味。MVには前後17インチのツーリスモ・ベローチェという長距離ツアラーがあるが、それに比べるとオフロード色を強く打ち出していることがネーミングからも分かる。 それもそのはず。デザインコンセプトは90年代にパリ・ダカールラリーで2度の優勝に輝いたカジバ・エレファント900がモチーフになっている。当時アフリカの砂漠を200km/h近いトップスピードでぶっ飛んでいった怪物マシンを駆ったのがイタリアの名手エディ・オリオリで、彼の名を冠した「LXPオリオリ」が世界限定500台のプレミアムモデルとして昨年のEICMAで登場したことは記憶に新しい。エンデューロ・ベローチェはそのスタンダード版量産モデルの位置づけである。 ────────── 完全新設計3気筒逆クランクに最新電子デバイスを投入 ────────── エンジンは水冷並列3気筒で新世代MV同様、車体の姿勢変化を抑えてハンドリングを向上させる発想の逆回転クランクを採用しているのが特徴。排気量を931ccに拡大した完全新設計で、最高出力124ps/10.000rpmの高回転パワーを稼ぎつつも3000rpmで最大トルクの85%を発揮するなど低中速トルクも両立させている。車体については骨格となるメインフレームがスチールとアルミ鋳造を組み合わせたダブルクレードタイプと比較的オーソドックスな作り。足まわりは前後210㎜のホイールトラベルを持つザックス製全調整式サスペンションにブレンボ製前後ブレーキを装備。エキセル製の前後21/18インチ軽量ワイヤースポークホイールにBS製A41タイヤを標準装備するなど本格的なアドベンチャー仕様となっている。ちなみにエンジンから車体まで基本スペックはLXPオリオリと共通だ。 電子制御も充実。4種類のライドモード(アーバン、ツーリング、オフロード、カスタムオールテレイン)に8段階のトラコン(5ロード、2オフロード、1ウェット)を搭載する他、装着タイヤの種類(オン用、オフ用)によってトラコン介入度を自動調整する最新機能も装備。また、2段階のコーナリングABSとエンジンブレーキコントロールや急制動時に後輪リフトを抑えるRLMも搭載。クルコンに加え、最大効率での発進加速を可能にするローンチコントロールやクイックシフター(アップ&ダウン)も標準装備された。また、これらの電子デバイスやMVライドアプリの情報を見やすく視覚化するフルカラーTFTディスプレイを装備。往年のラリーマシンを思わせる力強さとMVらしいエレガントな上質感の中に先端テクノロジーが盛り込まれている。