悪天候でも決行したカナダ「ダークスカイ・ツーリズム」で星空の代わりに見えたもの
暗闇を歩いただけなのに
集合場所だった駐車場に戻ってきたのは21時過ぎだった。集合は19時だったから、最初のレクチャーを含め約2時間かけて4kmの道のりを歩いたことになる。 参加費は1人50カナダドル。フェスティバルのほかのイベントやアクティビティと同じく、ガイドは英語のみである。 ナイトハイクで歩くのは、ピラミッド・ベンチというトレッキングルートの一部。闇の中だから風光明媚な景色も見えないし、目標となる山頂もない。星空が見えなかった今回は文字通り、暗闇を歩いただけなのだが、なんとも言えない充実感があった。明かりのある世界に戻って来てほっとしていると同時に、特別な体験が終わってしまうのが残念な気持ちもあった。 美しい星空を見るための条件は、いくつかある。まず高い建物などの構造物がないこと、空気が澄んでいること、空気が乾燥していること。そして何よりも暗いこと。 世界各地を旅してきて、何度か素晴らしい星空に巡り会ったことがある。 日本の星空保護区である西表島で見た七夕の天の川。アフリカのナミブ砂漠で見た、降ってくるような圧倒的な星空。どの場所も「暗い」という条件を満たしていたのだが、星の美しさに気をとられ、それを可能にしている暗闇の持つ意味を考えたことはなかった。 ジャスパーを日本でいう「星空保護区」と考えるのならば、一度も星空が見られなかったなんて、とんでもない不運だが、本来の呼び方である「ダークスカイ保護区」と考えるのならば、本質的に大切なものをここで発見したことになる。 取材協力 Travel Alberta https://www.travelalberta.com/ Tourism Jasper https://www.jasper.travel/
山口 由美(旅行作家)