最新鋭護衛艦「もがみ」型がオーストラリア海軍に採用!? 次期フリゲート計画を巡り日独が一騎打ち
12月19日、「もがみ」型護衛艦の10番艦が進水し、「ながら」と命名された。「もがみ」型はステルス性に配慮した未来的なデザインで知られる海上自衛隊の新鋭護衛艦だが、オーストラリア海軍の次期フリゲートに選定される可能性が浮上し、にわかに注目が集まっている。【自衛隊新戦力図鑑】 TEXT:綾部剛之(AYABE Takayuki) 小柄な船体に多彩な機能を備える「もがみ」型 「もがみ」型は、次世代の護衛艦として2022年に1番艦が就役して以降、ハイペースで配備が進んでいる。対レーダー・ステルス性を高めるため、艦の側面は船体から上部構造までが傾斜した平面で構成され、各種の通信用アンテナ等も巨大な1本角の「NORA-50複合通信空中線」に集約されている。 小型の船体ながら、多機能性が追求されており、対潜・対空・対水上戦闘に幅広く対応することが期待されている。特に、これまで掃海艦艇が担っていた機雷戦能力を、護衛艦として初めて備えている点は注目に値する。 そして、この「もがみ」型が日本のみならず、オーストラリア海軍にも採用される可能性が高まっている。オーストラリアが進めている水上戦闘艦増強計画において導入される次期フリゲートの最終候補として、日本の「もがみ」型と、ドイツの「MEKO A-200」型が選ばれたことが明らかになったのだ。 オーストラリア海軍は今後10年で戦力を倍増させる オーストラリアは2024年2月に、大規模な水上戦闘艦増強計画を発表した。これは現在の11隻体制から、2倍以上の26隻に拡充するというものだ。増大する中国の脅威、そして技術発展や紛争の多様化により、地理的孤立というオーストラリアの国防上の利点は薄れつつあり、同国は国防戦略の大幅な見直しに踏み切ったのである。 現在、同国海軍は「ホバート」級イージス駆逐艦3隻と「アンザック」級フリゲート7隻を保有しているが、増強計画は以下の通りだ。 ・「ホバート」級3隻はイージス・システムのアップグレードと、トマホーク・ミサイル搭載のための改修を受ける。 ・新たに「ハンター」級対潜フリゲート6隻を建造する。 ・退役する「アンザック」級に替わり、汎用性の高い新型フリゲートを11隻導入する。 ・無人運航も可能な新型水上艦6隻を導入する。同艦は長射程ミサイルを搭載し、艦隊の長距離攻撃能力を増強する。 上記のうち、「アンザック」級に替わる新型フリゲートの最終候補に、「もがみ」型をベースとした能力向上型(日豪共同開発)が選ばれた。そもそも、「アンザック」級がドイツの「MAKO 200」型であるため、同系統の発展型である「MAKO A-200」型が有利との下馬評もあるが、日本は官民一体の合同推進委員会を立ち上げるなど、売り込みに力を入れている。仮に実現すれば、日本の防衛装備による初の輸出事例となる。 オーストラリア国防省は計画の発表に添えて、「オーストラリアの社会と経済は海上貿易路や海底ケーブルなど、公海へのアクセスに依存している。繁栄の基礎となる海上連絡路の安全と安定を、海軍は確保しなければならない」という副首相の言葉を添えている。まさに日本が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」の考えに一致するものであり、艦艇共同開発が実現するなら、その関係をより深化させる大きなきっかけとなってくれるだろう。
綾部 剛之