「謎は深まるばかり」プールの“水深”は記録更新とは無関係? 豪代表選手「誰もが平等にチャンスがある」【パリ五輪】
パリ五輪は競泳男子100メートル自由形の決勝が現地7月31日に行われ、中国の潘展楽が世界記録を更新して金メダルを獲得した。潘は前半からトップに立ち、46秒40のタイムでフィニッシュ。今年2月に自身が記録した世界記録を0秒40縮めた。 【画像】ドラマ相次ぐパリ五輪の「悲喜こもごも」を厳選フォトでチェック! また、フランスのレオン・マルシャンも同じ日に2つの五輪記録を更新する快挙を成し遂げた。男子200メートルバタフライの決勝では、1分51秒21の五輪新記録で金メダル。さらに男子200m平泳ぎの決勝では2分5秒85の五輪新記録で、この日2つの金メダルを獲得した。 これらの記録が生まれる前まで、今大会の競泳でタイムが低調になっていることが話題になっていた。 その原因として、米メディア『New York Post』は「ラ・デファンス・アリーナに建設された仮設プールが浅すぎて波が立ち、泳ぐスピードが遅くなるという説が広まっている」と伝えていた。 同じく『The Athletic』も「オリンピックのプールは浅すぎるのか?世界記録は破られず、謎は深まるばかり」という記事を配信し、「普段はラグビーやコンサート会場として使われているこのプールで世界記録は1つも出ていない」と記していた。 また、『The Washington Post』のデイブ ・シェイニン記者は記事の中で「女子400メートル自由形決勝で奇妙なことが起こったとし、この大会は、パリ・ラ・デファンス・アリーナの8レーンに集まる水泳界の強者たちにとって『世紀のレース』になる可能性を秘めた大会だった」と紹介している。 同記者は「決勝に進出した選手のうち、自己ベストを更新できたのは最終的に5位に入った1人だけだった。これは、すべての水泳選手がピークに達するために全力を尽くす大会で驚くべき結果だった」とした。 女子400メートル自由形決勝はオーストラリアのアリアーン・ティトマスが金メダル、カナダのサマー・マッキントッシュが銀メダル、米国のケイティ・レデッキーが銅メダルを獲得したが、平均して自己ベストより1.5秒以上遅れてゴールしており、同記者は「世界記録、さらにはオリンピック記録も視野に入れたレースは、やや期待外れに終わった」とし、「首をかしげたくなるシナリオだ」としている。 他にも、男子100メートル平泳ぎでは、イタリアのニコロ・マルティネンギが59.03秒のタイムで金メダルを獲得したが、「これは2004年以来の五輪で最も遅いタイムであり、3年前の東京五輪では8位に過ぎなかった」と説明している。 この原因として考えられたのが、前述したように会場がフランスのラグビーチーム「ラシン92」の本拠地となっている屋内スタジアムの床の上に建設された、通常よりも浅いプールであるという説だ。 男子100メートル自由形で銀メダルを獲得したオーストラリアのカイル・チャルマーズは「ゆったりしたプールでなければならない」と話す一方、「誰もが平等にチャンスがある。私たちはみんな同じプールで泳いでいる」と、同じプールで泳いでいる以上はチャンスは平等であると続けた。 しかし、パリ五輪で使用されているプールは今年の春に建設され、水深は2.15メートル。最低水深の2メートルよりは安全なものの、過去4回の五輪やその他の国際大会、そして米国の五輪代表選考会の標準的な水深である3メートルには遠く及ばないという。 一般的にいえば、プールは深い方が波が生じにくいためスピードが出やすいとされる。チャルマーズの言葉通り、チャンスは平等。選手にはどんな環境であれ記録を打ち破る可能性があることを証明してみせた。 [文/構成:ココカラネクスト編集部]