10万円給付、財源議論は何処へ? 国の緊急コロナ財政対策
赤字国債、どう返すのか道筋を
10年前、リーマンショック後に配布した「定額給付金」(2009年。1人1.2万円。18歳以下などは2万円)は効果がなかったと見る向きが多かった。今回の10万円配布は本当に必要なところにカネが回る仕組みなのか。行政がカネを直接給付するやり方は際限なく広がる可能性がある。今回の給付金が実際どんな効果を生むのか、考える必要がある 少なくとも今回の大規模な赤字国債の発行について、将来どのようにして返すのか道筋は示さなければならない。分かりやすく言うとどれぐらい増税が必要となるかだ。そのことを国民に明示してこそ本当に必要で効率的な予算かどうか判断できる。慌てて検品されていないマスクを1世帯に2枚を配る愚行ではなく、本当に必要なところにカネを回す。この先も就業補償などの議論が出てきそうだが、医療崩壊への対処や予防薬の配布などにカネを回すべきではないか。
“コロナ増税”やむなしか
膨大な国債について、MMT理論(自国通貨を自国の中央銀行が発行できるのであれば、いくら政府赤字が膨らんでも、新たな通貨を発行して払えば良い)を振りかざし赤字国債はいくら出しても政府は潰れないという人も一部にいるが、常識的には借金は返さねばならない。世の中、返してくれない人にカネを貸す人はいない。 国家が家計と違うのは国には徴税権があり、必ず借金は返してくれると信じているから国債を購(あがな)う人がいる。国債の信用はそこにある。「国債」は「税金の前借証書」であり「将来集めた税金で返す」という約束の上にある。 この常識に立つと、例えば2重3重行政の多い国・地方の統治機構の大改革などをしてムダな歳出カットをするなどの政治をやらないなら、この先の返済は増税によって賄うしかない。今回の1人10万円給付で12.8兆円が使われる。その部分だけを見ると、9年前の東日本大震災で発行された復興債11.6兆円が先例となろう。私たちに所得税を均等割りで2.1%上乗せし25年間続けて返済する、いま行われているこの復興債方式だ。 おそらく事態が落ち着くと、これと同じ趣旨の増税を求める“コロナ債”が提案されるのではないか。すると、コロナ増税と東日本震災増税を合わせ4.5%近い増税が今後10数年は続く。そのあと残り10年近くコロナ増税のみ続くことになる。もちろん、これは割り勘に近い所得税の増税の話であって、他の赤字は消費税の値上げで回収する方途しかないのではないか。
醒めた目でチェックを
仮に事態が終息し経済がV字回復したとしても、この30年間実質経済成長ゼロのこの国において、経済成長による税収増が期待できるとは考えにくい。コロナ禍で倒産、失業が相次ぐなど大きく傷んだ経済の回復には時間が掛かろう。そうした中での負担増はこれから働き盛りになっていく若い人たちが今の高齢者の分まで引き受ける形になっていく。重くのしかかるこの負担が「世代間格差」を更に広げる可能性はないだろうか。 世は”緊急事態”で全てが括られてしまうような様相だが、少し醒めた目でカネやサービスのバラマキ合戦の続く政治をチェックする必要があるのではないか。そのツケは全て私たちが支払うことになるのだから。