10万円給付、財源議論は何処へ? 国の緊急コロナ財政対策
10万円の一律給付などを盛り込んだ補正予算が4月30日に成立する見通しだ。新年度が始まったばかりの異例の補正予算。総事業規模117兆円、予算の歳出規模25.7兆円に及ぶ大型補正予算だ。切迫した緊急コロナ対策としての財政措置だが、休業補償を含め「いくら配るか」「いくらくれるか」に関心が集中している一方で、財源の議論が抜け落ちている感がある。これでいいのだろうか? (佐々木信夫・中央大名誉教授)
財源は全て「借金」
今年の予算で当初国債発行は32.6兆円とされていたが、今回の追加措置で過去最大の58.2兆円に膨らむ。追加分の総額25.7兆円歳出の財源は全て赤字国債で賄(まかな)うという。まるで「赤字国債、際限なし」ではないか。 これで終わるかどうかも分からない状況の中、与野党ともサービス合戦のように給付金をどんどん膨らませる政治情勢だ。雪だるま式に増え続けるこの国の借金。既に国債発行残高は1100兆円を超えているが、構わずどんどん積み重なっていく。 「完全に財政規律のたがが外れた。財政健全化はどうなるのか」 そう懸念する声もあるが、「そんな話より、今すぐカネが欲しい」、「いつくれるか」の声にかき消されている。もちろん、この緊急事態を乗り切るには大胆な財政出動はやむを得ない。だがサービスには必ず負担が伴う。そのことを伏せた議論は正しいとは言えない。 そうでなくとも、この国の財政は図のように歳出規模はどんどん膨れているが税収規模(歳入)は増えておらず、歳出と歳入が「ワニの口」のように大きく開く財政運営が続いている。
この開いた口を閉める改革努力はほとんど見られない。与野党問わず、ポピュリズム政治大合唱の様相を呈している。今回の10万円配布についても誰も負担の議論をしない。あたかもカネが天から降ってくるかのようだが、そのツケは必ず私たちに降りかかってくる。この点を見落とす訳にはいかない。