食品メーカー、価格転嫁“道半ば” 「全て転嫁できた」は55.1%
食品産業センターが19日に公表した23年度の取引慣行実態調査結果で、原材料費の上昇などによる食品メーカーの値上げが依然として全面的に受け入れられにくい状況であることが浮き彫りになった。今年2月までの1年間に価格転嫁を取引先小売業に要請したメーカーのうち、「全て転嫁できた」と答えたのは全体の55.1%にとどまり、前回調査に比べ0.8ポイント下落した。受け入れまでの期間の長さや手続きの複雑さを問題視する声も多く、加速度的な円安に苦慮するメーカーに暗雲を投げ掛けている。
値上げ浸透進むも完遂に課題
同調査(「食品産業における取引慣行の実態調査」)は大規模小売業者による優越的地位の濫用の実態把握などを目的に、全国の食品メーカーを対象にほぼ毎年行われているもの。23年度調査は今年2月に実施され、446社から有効回答を得た。 それによると、調査までの1年間に価格転嫁を要請したメーカーは全体の86.1%で、前回調査に比べ6ポイント上昇。このうち「全て転嫁できた」のは既出の通り55.1%にとどまり、以下、「7~9割程度転嫁できた」(34.1%、前回調査比3.7ポイント上昇)、「1~6割程度転嫁できた」(9.9%、2.9ポイント下落)、「要請したが全く転嫁できなかった」(0.9%、横ばい)となっている。 また、小売業態別に「全て転嫁できた」割合をみると、百貨店(70.5%、2.1ポイント上昇)、通信販売(67.2%、7.9ポイント上昇)で進展がみられる一方、CVS(55.9%、4.6ポイント下落)、食品SM(52.6%、3.9ポイント下落)、DS(41.4%、6.9ポイント下落)は受け入れ環境がむしろ悪化した。 さらに転嫁要請への小売側の対応で問題になり得る事例(自由記述)では、「値段が認められるまでには3ヵ月程度かかる」(缶詰メーカー)、「価格改定の案内をしても先送りになるばかりで3ヵ月待ってほしいとの内容で了承したが、6ヵ月待たされた」(菓子メーカー)など、実現の遅さを問題視する声が目立つ。 「競合店が値上げしたことの証明(値札の画像など)がなければ応じない」(水産食料品メーカー)、「複数企業で、競合企業の値上げ証明(レシート提出)を求められた」(冷凍調理食品メーカー)など、小売側の他店対抗が速やかな転嫁を阻んでいる面もある。 なお、「要請したが全く転嫁できなかった」と答えたのは、いずれも資本金1億円未満のメーカーであり、中小の厳しい現実を物語る結果となっている。適正な価格転嫁環境の実現は道半ばと言わざるを得ない。
日本食糧新聞社