認知機能の低下だけじゃない! 「高齢者の交通事故」に目の問題が隠れている危険 視野障害を「自覚していない」人たちがマズい
■「自覚していないケース」で事故 視野が狭い緑内障の人が運転することは、危険ではないのだろうか。相原医師は「緑内障と診断されている人が、事故を起こしやすいというデータはありません」と話す。 「“緑内障を自覚している人”は、視野のどの部分が欠けているのかを把握していて、それをカバーするために視線をよく動かしたり、首を左右にふったりして慎重に運転しますし、雨の日や夜間は運転を避けるなど、無理をしない傾向があります。むしろ問題となるのは、“緑内障を発症しているのに、それを自覚していないケース”です」(相原医師)
緑内障の推定患者数は500万人程度といわれているが、そのうちの9割程度が本人に自覚がない潜在患者だと考えられている(「日本緑内障学会多治見緑内障疫学調査」報告)。 というのは、緑内障は、かなり進行するまで自覚症状がないため、コンタクトレンズ処方時の受診や健診などで指摘されない限り、発症には気づかないからだ。 確かに緑内障になると視野が欠ける症状があるが、一部が黒くなるわけではなく、かすむ程度なのでわかりにくいうえ、両目で見ると視野が欠けている部分を補えるので、気づきにくい。
相原医師によると、事故を起こして初めて緑内障だとわかるケースもあるそうだ。 「例えば運転業務を行う企業のドライバーが事故を起こしたときに、ドライブレコーダーで検証することがあります。普通なら事故を起こさないような状況で事故が起きた場合、ドライバー自身の問題が疑われます。企業側が事故を起こしたドライバーに眼科の受診を促したところ、緑内障だったというケースもあります」 緑内障は視野の中心から欠けることは少なく、主に鼻側の上方もしくは下方の一部から徐々に欠けていき、やがて上下ともにかけていく。基本的に緑内障の進行はゆるやかなので、視野の中心が欠けるまでには長い年月がかかる。
「下方の視野が欠けているほうが、左右からの車や人、物にぶつかりやすく、事故につながりやすいようです。一方、上方の視野が欠けている人は、信号や道路標識などを見逃す危険性があります」(相原医師) ■緑内障の人の転倒リスクは4倍以上 このように同じ緑内障でも、どの部分の視野が欠けているのかによって注意点はさまざまだ。自分がどの部分の視野が欠けているのかを自覚していれば、顔ごと視線を向けるなどの対策ができる。