ヤジ排除「社会主義国のような出来事が地元で…」地方のテレビ局が訴えたいこと
報道の道に進むきっかけとなったのは、海外でのボランティア活動だったという。 「湾岸戦争中の1991年に、ヨルダンの難民キャンプでボランティア活動をしたんです。その時に、爆撃によって家と生活を破壊され、逃げざるを得なかった人たちに『僕にできることはあるか』と聞きました。すると「日本に帰ったら俺たちのことを伝えてくれ」と返ってきたんです。 自分にはお金も資格もないけれども、彼らについて伝えることはできると思いました。伝えるということを職業として意識したのはその時が初めてです」 そして山﨑さんは今、地方の放送局を拠点に「おかしいことはおかしい」と、ヤジ排除問題を伝え続けている。 「たとえば、ガザで起きているイスラエルとハマスの衝突に対して、心を痛めて遠い札幌から『戦争反対』と声を上げている人がいます。遠い国で起きている人権侵害であっても、無関心でいてはいけない。世界中でおかしいと声を上げる人々がいる中で、僕らも声を上げることの大切さを伝えていきたいと思います」 ところで、ヤジ排除訴訟は最高裁に舞台を移し、引き続き争われることになったが……。 「最高裁での裁判がいつ行われるか、まったくわかりません。数年かかるとも言われますし、明日にでも突然、手紙が届くかもしれない。いずれにしても、最高裁の結論が出るまで取材を続けます」 映画は全国27館(15日時点)で順次、公開される。11月20日に札幌のシアターキノであった先行上映会では、道警の排除行為に対して客席からたびたび嘲笑が聞かれたという。 山﨑裕侍(やまざき・ゆうじ)HBCコンテンツ制作センター報道部デスク。1971年、北海道生まれ。日本大学卒業後、東京の制作会社に入社。テレビ朝日『ニュースステーション』『報道ステーション』のディレクターを務める。’06年、HBC北海道放送に中途入社。警察・政治キャップや統括編集長を経て、’22年4月から現職。ディレクターとして臓器提供の現場や地域医療の課題を追ったドキュメンタリーを制作。プロデューサーとして『ネアンデルタール人は核の夢を見るか~“核のごみ”と科学と民主主義~』などがある。 取材・文:斉藤さゆり
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