ヤジ排除「社会主義国のような出来事が地元で…」地方のテレビ局が訴えたいこと
「多くの社は第一報で終わっていて、気がつくと熱心に報道し続けているのは我々だけになっていました。北海道放送がやめると報じるメディアがなくなる恐れがある。問題は何も解決していないのに、あっという間に忘れ去られて過去の出来事になってしまう。我々には続報しないという考えはありませんでした」 ヤジ排除問題の報道を続けようと決めた理由はもう一つある。 「警察を批判するメディアが少なくなっていると、日頃から感じていました。マスコミやメディアが権力を監視する役割を果たさず警察の広報のようになってしまったら、報道全体が信頼を失うことになりかねない。道警に嫌味を言われようとにらまれようと、報道機関として『おかしいことはおかしい』と言い続けようと思ったんです」 ◆Yahoo!ニュースの配信に寄せられる「ヤジは迷惑」「ヤジは選挙妨害」のコメント 昨年11月、山﨑さんは北海道放送報道部道警ヤジ排除問題取材班の著者名で『ヤジと民主主義』を出版している。並行して映画『ヤジと民主主義 劇場版』を製作し、TBSドキュメンタリー映画祭に出品。そしてこの度、拡大版の全国公開に漕ぎつけた。「北海道だけの問題ではない。道外の人にも知ってもらいたい」との思いがずっとあったという。 「ヤジは自分の意見を表明する一つの手段だと思います。一方ヤジ排除は、おかしいと感じることに声を上げる自由を侵害する行為です。 ヤジ排除は何も警察だけの問題ではありません。日本は異質なものを排除することを許してしまう社会になっていないでしょうか。ヤジ一つ飛ばせない社会になったらどうだろうか。息苦しい世の中になることの怖さをわかってほしいですね」 映画には、ヤジを飛ばして警察官に連れていかれる大杉さんや桃井さんに迷惑そうな視線を向ける市民も映っている。ヤジを演説の邪魔をする行為と見なす人は、もしかすると少なくないかもしれない。 「HBCの報道がYahoo!ニュースなどに配信されるたびに、ヤジは選挙妨害だとか演説を聞きたい人にとって迷惑だといったコメントが必ず寄せられます。コメントを書く人には『みんな静かに聞いているんだからお前も静かにしろよ』という、同調圧力的な考え方が根強くあるような気がするんです。ヤジをイコール妨害行為と捉えている人にこそ、映画を最後まで見て考えてもらいたいですね」 大杉さんも桃井さんも、演説を妨害するためにヤジを飛ばしたのではない。それは映画を観ればわかる。わからないのは、映画の最後で伝えている今年6月の札幌高裁判決の中身だ。桃井さんは勝訴、大杉さんは逆転敗訴。警察官の行為に対する判断が、原告2人ではっきりと分かれたのはなぜなのか。