帰島搬送など沖永良部最多 民間医療用小型機メッシュ 求められる継続支援
7月下旬、鹿児島県沖永良部空港に航空機を使った医療支援を行うNPO法人メッシュ・サポート(以下、メッシュ)=沖縄県、塚本裕樹理事長=の小型機が到着した。メッシュによると、60代の男性患者を運ぶためで、男性は前月に沖縄県の病院に入院。この日は沖永良部島で治療を継続するため帰島した。生命維持のために薬剤投与が必要で、民間便での移動が難しく、メッシュに搬送要請があったという。このような帰島搬送は沖永良部島で今年度に入って5回目。過去の実績をみても、同島をはじめ奄美諸島に関わる搬送要請は沖縄県の離島と比較しても多い。 ◇沖永良部、与論で高いニーズ メッシュは2007年から医療用ヘリ、15年から医療用小型飛行機の運用を開始。小型機は琉球諸島全域(奄美大島から与那国島まで)を対象に、身体的都合で公共交通手段での帰島が困難な患者の帰島搬送や、公的救急搬送手段の適用外となる準救急患者の搬送などを行ってきた。22年3月に伊江島空港で起きた墜落事故以降、活動を休止していたが、新しい機体を確保し、23年10月から再開している。 小型機の搬送実績(15年10月~24年7月)をみると、これまでに沖縄~奄美10島に109回の患者搬送実績があり、うち沖永良部島は47回。次いで与論島17回、徳之島6回、奄美大島1回。特に沖永良部、与論両島でのニーズの高さがうかがえる。 ◇必要とされる背景 メッシュに搬送を要請するケースについて、朝戸医院(和泊町)の朝戸末男院長は「ドクターヘリや自衛隊ヘリなどで沖縄や奄美に救急搬送された患者が治療を終えて島に帰ることになったとき、状態によっては民間の定期便では難しい。帰れなかったら家族も困るので、メッシュをお願いして島に帰してもらっている」と帰島搬送の一例を挙げた。 沖永良部徳洲会病院(知名町)の藤崎秀明院長は「緊急で今運ばないと命が危ない、後遺症が出てしまうという場合はドクターヘリや自衛隊、海上保安庁などの搬送手段が選択できるが、例えばあすぐらいに手術できればいいとか、本土であれば通常救急車で搬送できることが離島ではできない。そういった場合に使う」と準救急搬送の一例を説明した。 民間の航空便利用を検討する場合もあるが、ストレッチャー料金や付き添い人の運賃を含む高額な航空運賃がネックとなっている。 ◇求められる支援 離島でも等しく受けたい医療を選択できるようにするためには、メッシュの活動に頼らざるを得ない現状があるが、活動は団体や個人からの寄付が財源。安定的な財源確保が課題となっている。 与論町は21年からふるさと納税を活用し、年間50万円をメッシュに寄付している。自治体では唯一で、町によると、距離的文化的にも沖縄に近い同町ではかかりつけ医が沖縄にいる患者も多く、町民からメッシュへの支援を求める声が強いという。 塚本理事長は「島に帰って来られないかもしれないというリスクが、治療を諦めざるを得ない理由となることもある」と、メッシュの存在が離島患者の医療選択の支えとなっていることを強調。活動継続に向け、支援を求めた。