マルケス「超巨大な虫がはりついて…」想定外の視界不良が呼び寄せた“王者完全復活”を予期させる追走復活劇
日本では秋も深まり、MotoGPの今シーズンもあと3戦を残すだけとなった。 Moto3クラスはすでにダビド・アロンソが第16戦日本GPで初タイトルを獲得。Moto2クラスでは小椋藍が第17戦オーストラリアGPで4位になってタイトルに王手をかけ、第18戦タイGPで5位以内でフィニッシュすれば自力でタイトル獲得となる。 【この記事の写真】“乗れてる感”あふれるオーストラリアGPのマルケスの走り、全盛時を思わせる明るいパフォーマンス、マルケスを好きすぎて泣いちゃう少年などを写真で見る そして最高峰のMotoGPクラスは、ドゥカティ・サテライトのプラマック所属のホルヘ・マルティンと、3連覇を目指すドゥカティワークスのフランチェスコ・バニャイアの一騎打ちとなっている。第17戦オーストラリアGPを終えてマルティンは424点、バニャイアは404点とその差はわずか20点だ。 バニャイアから59点差の345点で3位につけるのはグレシーニのマルク・マルケス。さらに14点差の331点でドゥカティワークスのエネア・バスティアニーニが続いている。計算上ではこの4人にタイトルの可能性があるが、現実的にはやはりマルティンとバニャイアの戦いとなる。
得意のコースでマルケスが見せた完全復活の片鱗
オーストラリアGPではその2人の戦いにマルケスが割って入って今季3勝目を挙げ、大会を大いに盛り上げた。今季ドゥカティに移籍し、1年落ちの旧型ワークスマシンで上位2人と互角の戦いをすることも多く、「這い上がってきた絶対王者」として、ここフィリップアイランドでもファンの大声援を受けた。 マルティンとバニャイアにとって、マルケスに先行されることはタイトル争いにそれほど大きな影響はない。しかし、そうでなかったとしても、この日のマルケスに勝つのは至難の業だったであろうことは明らかだった。 この時期のフィリップアイランドの気温が20度を超えることはめったになく、選手は雨と風と寒さに苦しめられることが多い。メルボルン湾に浮かぶフィリップアイランドでは2月にスーパーバイク世界選手権の開幕戦が開催されるが、こちらは対照的に暑さとの戦いになる。MotoGPもその時期に開催してほしいという声は大きいが、シーズン終盤戦のカレンダーに組み込まれる日本、タイ、マレーシアといったアジアラウンドとオーストラリアは連戦になることが多い。かつ、今年もそうだったが、日本GPから1週空いて、オーストラリア、タイ、マレーシアの3連戦というハードスケジュールになることが多い。 不安定な天候の中でシーズンを通じてもっともハイスピードの戦いとなるフィリップアイランドは、MotoGPライダーにとってもっとも転倒リスクの大きいレースとなる。しかもタイトル争いの渦中となればミスは禁物。そんな状況の中で、マルケスは得意とする左回りのレイアウトで圧倒的な速さを発揮してみせたのだ。 決勝レースのウォームアップを終えてグリッドに着いたとき、実はマルケスにハプニングが起きていた。スタート直前、ヘルメットの「捨てバイザー(薄いフィルム)」に大きな虫が潰れて付着し視界を遮るため1枚捨てることにしたのだが、その捨てバイザーが風の影響で運悪く路面とリアタイヤの間に貼りついた。それを取り除くほどの時間はなく、レッドシグナルが消えてクラッチミートした瞬間、タイヤに貼りついた捨てバイザーの影響でタイヤがスリップし、猛烈な白煙が上がった。 スタートに失敗して出遅れたマルケスは1コーナーで13位までポジションを落としたが、1周目にして6番手まで浮上する驚速ぶり。その後もぐいぐいとポジションを上げての優勝だった。
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