アヴリル・ラヴィーン、絶対に知っておくべき名曲10選
アヴリル・ラヴィーン(Avril Lavigne)の主要曲を完全網羅したキャリア初ベスト・アルバム『Greatest Hits』が大きな注目を集めている。そこで今回はライター・セメントTHINGに、彼女のキャリアからセレクトした「絶対に知っておくべき名曲」を解説してもらった。 【画像を見る】アヴリル・ラヴィーン、日本でのライブ写真 * 2020年代における重要なトピックのひとつには、なんといってもポップ・パンクの劇的な再評価があげられる。若手アーティストたちによるポップ・パンク曲のヒットから始まったこの現象は、単なる2000年代カルチャーのリバイバルを超え、ジャンル自体の再興につながった。エモ/ポップ・パンクフェス「When We Were Young」が大反響を呼び、ブリンク182やフォール・アウト・ボーイなどのベテラン勢も充実した新作でカムバックしたいま、このジャンルへとリスナーの熱い視線が改めて注がれている。 そしてそのキーパーソンの一人が、アヴリル・ラヴィーンだ。いまより男性中心的だった2000年代に絶大な商業的成功を掴み、数少ない女性ポップ・パンク・アーティストとして確固たる存在感を誇った彼女。そのあり方は多くの女性の背中を押し、より多様なシーンへとつながる道筋をつけたといっていい。オリヴィア・ロドリゴやウィローといった女性スターたちが業界を先導する未来を、彼女はいち早く切り拓いてきたのだ。 折しもキャリア初のベスト・アルバム『Greatest Hits』をリリースしたばかりのアヴリル。世界に影響を与え続ける彼女の魅力に、数々の名曲を通しぜひ迫ってみてほしい。 1.「Complicated」(2002年) アヴリルの記念すべきデビュー・シングルにして世界的ヒット曲。彼女について知らなかったとしても聴いたことがある人は多いはずだ。親しみやすくキャッチーなメロディに、聞き馴染みのいいクリーンなプロダクション。ややこしくしないで、ありのままのあなたを見せてと率直に訴える瑞々しいリリック。一聴して誰もが好きになるような仕上がりだ。ヘヴィなサウンドを望んでいたデビュー時のアヴリルにとってソフトな曲調はやや不本意だったそうだが、20年経ったいまも色褪せない名曲であることは否定できない。近年ではテイラー・スウィフトやオリヴィア・ロドリゴとデュエットで披露する機会もあり、改めてその文化的インパクトを印象付けた。 また日本においてもとても人気の高い曲であり、2022年9月「THE FIRST TAKE」において特別なアコースティック・アレンジでその変わらぬ美声を披露したのも記憶に新しい。ニュー・アルバム『Love Sux』リリース直前というスペシャルなタイミングでの予想外の贈り物は、コロナでの来日延期を経たファンを大いに喜ばせ、1300万再生を突破(2024年7月現在)。アヴリルと日本のファンの結びつきの強さを改めて示した曲でもあるといえるだろう。 2.「Sk8er Boi」(2002年) 2ndシングル。アヴリルの代名詞的な曲は無論「Complicated」だが、その初期のイメージを決定づけたのはなんといってもこの曲だろう。「彼は男の子で / 彼女は女の子 / これ以上なんか言えることある?」というあけすけすぎる歌いだし、スケート・パンク/ポップ・パンクの魅力を不遜なユーモアとともに歌い上げるリリック、パワーポップからの影響も感じさせる爽快なギターサウンド。MVで披露したグリーンのTシャツにネクタイを合わせたルックも印象的で、彼女の新星ロックスターとしての立ち位置を確固たるものにした。ちなみにアヴリルがTikTok初投稿に選んだのもこの曲。伝説的なスケーター、トニー・ホークとのコラボで世間をあっといわせた。 3.「I’m With You」(2002年) アヴリルといえばポップ・パンクという印象があるが、実はバラード曲も数多くヒットさせている。そのなかでも特に高い人気を誇るのがこの曲だ。「バカみたいに寒いこんな夜に / この人生の意味を見出そうとしている」とぶっきらぼうな手つきで孤独へと迫る歌詞は、ティーンらしい切実でまっすぐな姿勢が胸を打つ。アヴリルの情感に満ちた歌声も絶品で、2000年代を代表するパワー・バラードのひとつといっていいだろう。リアーナやチャーチズなど多くのミュージシャンからも愛される曲であり、2020年にはヤングブラッドがBBC Radio 1でカバーを披露。後に二人は本作にも収録されている「I’m A Mess (with YUNGBLUD)」でコラボしている。エバーグリーンな魅力を持った名曲だ。 4.「Losing Grip」(2003年) デビュー・アルバム『Let Go』からの最後のシングル。「Unwanted」と並び制作初期からあった曲だが、レーベル側がハードなサウンドに難色を示したため、アヴリルが自身の要望を押し通す形でなんとかリリースされた。ニューメタルやグランジの影響を感じさせる重たいリフに、不誠実な相手への怒りを躊躇なくぶちまける歌声。この強烈な曲をアルバム冒頭に持ってきたところに、当時の彼女が求めていた方向性が垣間見える。デビュー作では結果としてやや浮いてしまったが、2ndアルバム『Under My Skin』はこの路線を引き継ぐようによりダークでオルタナティブな仕上がりとなった。アヴリルのヒリつく初期衝動を感じられる一曲だ。