アヴリル・ラヴィーン、絶対に知っておくべき名曲10選
8~10曲目 『Greatest Hits』の聞きどころ
8.「Here’s to Never Growing Up」(2013年) セルフタイトルアルバム『Avril Lavigne』からのリードシングル。いつまでも飲んでバカ騒ぎしよう、大人になんかなっていられないと高々と叫ぶライブでの定番曲。プロデュースにはボーイズ・ライク・ガールズのマーティン・ジョンソンと、ニッケルバックのチャド・クルーガーが入っており、キックドラムの音が響き渡るアンセミックな仕上がりとなっている。当時デビュー10周年を迎えたばかりのアヴリルの、素直に大人しくする気はないという気概が伝わってくるパーティーチューンだ。失われた青春の日々を愛おしむかのようにプロムを舞台にしたMVは、リリースから10年を越えた今見返すといっそう味わい深い。ほろ苦くスイートな一曲だ。 9.「Head Above Water」(2018年) デビューから順調にキャリアを積んでいたアヴリルだが、2014年の終わりに大きな試練が訪れた。突如ライム病という難病を罹患し、寝たきりの闘病生活を余儀なくされたのだ。全身の痛みと倦怠感、身体が死を受け入れ、機能を停止していく感覚。その時期を「人生で一番辛い日々」と振り返るアヴリルは、音楽活動を諦めそうになったときもあったという。そんな深い水の中でもがくような息苦しさから、文字通り水上へ浮かび上がるように生まれ出たのがこの曲だ。どうか私に強さをお賜りくださいと神へと祈りを捧げる壮大で感動的なバラード。ビルボードのクリスチャン・ソング部門にもランクインし、彼女の受難と再生を告げる見事なカムバックとなった。 10.「Bite Me」(2021年) ブリンク182のトラヴィス・バーカーのレーベルへと移籍し、これまで以上の創造的自由を手に入れたアヴリルが選んだのは、自身のルーツであるポップ・パンクへの回帰だった。プロデュースにはトラヴィスだけではなく、ゴールドフィンガーのジョン・フェルドマンやラッパーのモッド・サンも参加。アヴリルらしい強気な歌詞、前のめりでパワフルなバンドサウンドは、まるで2000年代に戻ったかのような感覚だ。収録アルバム『Love Sux』にはマシン・ガン・ケリーやブラックベアー、マーク・ホッパスなどシーンの重要人物が多数参加。最初から最後まで妥協なくポップ・パンクを追求し、ロックスターとしての彼女の堂々たる帰還を宣言した作品となった。 * 『Greatest Hits』において注目すべきは、1st~3rd、そして最新作『Love Sux』からの選曲が特に多い点だ。これらのアルバムの曲は基本的にロックやポップ・パンク曲が多く、それこそが現在のアヴリルのモードであることが感じられる。ポップやヒップホップに接近した4thや5thから、ロック色の強い「Rock N Roll」や「Smile」が選ばれているのもその表れだろう。 この姿勢の背後には、やはりポップ・パンク・リバイバルがあると考えるのが妥当だ。オリヴィア・ロドリゴを筆頭にした後輩女性アーティストの尊敬の声や若手ミュージシャンとの交流が、アヴリルに影響を与えたことは想像に難くない。デビュー22年目を迎えたアヴリルは、いままで以上にロックを志向している。 しかし同時にこのベストには、「What the Hell」や「Here’s to Never Growing Up」などポップス寄りのヒット曲もきちんと収録されている。ここからアヴリルに入門したいリスナーがいれば、気になった曲が収録されているアルバムから手にとるのがいいだろう。アヴリルの充実したディスコグラフィーを、ぜひ楽しんでほしい。 現在は世界ツアーの真っ最中。グラストンベリー2024では7万人規模のステージを満員にし、英メディアからの絶賛を集めた彼女。2022年に引き続き、再びの来日公演を期待したい。 --- アヴリル・ラヴィーン 『Greatest Hits』 発売中
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