バスケ東京五輪の星・八村塁が日本人初の快挙、全米大学トーナメント出場へ
その八村に開幕からずっと続いている課題は「思い切ってプレーすること」だ。八村の持ち味はゲームに勢いを持ち込むことのできるダイナミックなプレー。しかし開幕から勝ち続けていたチームにおいて、その持ち味を発揮することは思った以上に難しいことだった。 ペパーダイン大と対戦した1月28日の試合後、八村は言った。 「細かいところまでしっかり見るチームなので、その中で考えてやらないといけない。もっと考えて、今まで考えていた以上に考えてやらなきゃいけないので」 「それが一番大変なところか」と聞かれると、「大変ですね。自分の思う通りにしたいと思うんですけど、その中でチームの勝ちを優先してやっていかなければいけないので。そう考えてやっていく中でやっぱり迷っているところが出ているのかなと思います」と話した。 八村がこのように話す前、同チームのトム・ロイドアシスタントコーチが「日本人の特徴なのかな。ちゃんとやらなければいけない。失敗をしてはいけないと考える。でももっと思い切りやればいいんだ」と話していた。 何度もコーチからそう言われ、頭ではわかっている。しかし、チームにはチームで定められたプレーがあり、自分の役割というものがある。それがきっちりと出来ているからこそゴンザガ大は勝っているわけであり、自らの思い通りにプレーすることで崩すことはできない。それが躊躇につながり、思い切ったプレーができなくなってしまうのだ。 またアメリカでプレーすることの困難の一つに移動がある。 同じカンファレンス内のチームへの遠征といえども、移動は飛行機を要する。この飛行機移動が思った以上に大変で、「(移動時間は)短いんですけど、(座席で)固まってずっと飛行機に乗るというのが…。それだけで辛いところがあります」と八村は言う。 大学生であるから勉強もおろそかには出来ず、勉強、練習、試合、移動が繰り返された4ヶ月を振り返り、「僕はそんなに試合でプレー時間貰っていないにも関わらず、身体にいろいろきたり、疲れが出たりしました」と話す。 ただ八村の強さを感じたのは、そんな苦労の中での実情を聞いた時だ。 日々の疲れで実際に体重も減った。しかし八村は「体重が減ったことで動きが良くなっているんじゃないかなと思って。筋肉が引き締まったという感じです」とさらりと言い、好結果に繋がったことを喜んだ。 フュー監督は、八村のここまでの成長に「ディフェンスでしっかり指示通りに動けるようになっているし、シュートが良くなった。特にスリーポイントが向上している」とダンクだけではない八村の幅の広いプレーぶりを評価したが、日本でのプレーを知っている人が「インサイドプレーでのスピードが向上していて驚いた」というほど切れのあるプレーも身につけた。