ドイツは蘇るのか― 2024年に欧州選手権を自国開催するサッカー大国
ドイツは蘇るのか―。2024年、欧州きってのサッカー大国の一つであるドイツは欧州選手権を開催する。昨年のワールドカップ(W杯)で日本に敗れるなど、近年は低迷する同国代表チームが、自国のサポーターの前でどんなプレーを見せるのか? 2023年9月に就任が発表されたユリアン・ナーゲルスマン監督の下で復権を期す「マンシャフト(die Manschaft=代表チームの意)」に注目したい。
現在のドイツ代表監督であるナーゲルスマン氏は2016年2月に28歳の若さでホッフェンハイムの監督となり、2019年夏にはライプツィヒの指揮官へと転身。欧州チャンピオンズリーグ(CL)ベスト4入りなどの実績を残した。そして、2021年から同国王者のバイエルン・ミュンヘンで采配を振った気鋭の戦術家である。選手としてのキャリアは短かったが、指導者としてデータを駆使するなど先端技術の導入に積極的であることから「ラップトップ」世代とも呼ばれている。3バックと4バックの布陣を巧みに使い分け、縦に速いサッカーを展開。5レーン理論をさらに細分化した7レーン理論を取り入れたことでも知られる。 バイエルンの監督を今年3月に解任されたが、9月に代表監督に就任した。記者会見で「来夏にホームで行われる欧州選手権は、私にとって非常に大きな刺激であり、チームにとって大きな挑戦だ。熱意と大きな期待、そして責任感を持ってこの大会に臨む」と固い決意を述べている。ドイツがこの欧州選手権でまたも失態をさらしてしまうようだと、強国の看板は完全に過去のものとなってしまうだろう。 ドイツの苦悩をあらためて振り返ってみたい。2014年ワールドカップ(W杯)ブラジル大会で、速さと組織力を攻守両面で組み合わせたサッカーで世界一となった。その後も2017年あたりまでは国際試合で堅実な強さを誇っていた(2016年欧州選手権はベスト4。コンフェデレーションズカップも若手主体で臨んで優勝している)。しかし、2018年に入ってから成績は下降線を辿った。相手陣内に押し込んでパスをつなぐスタイルを突き詰めるあまり、ボールを失ってからのカウンター攻撃への対処にもろさを露呈。W杯ロシア大会はメキシコと韓国に敗れて、1勝2敗で同国史上初めて1次リーグ敗退の憂き目に遭った。2006年のW杯後から指揮していたヨアヒム・レーウ監督の長期政権の弊害も指摘された。 2021年の欧州選手権もベスト16で敗退といいところがなく、レーウ監督は退任。しかし、ハンジ・フリック監督に代わって臨んだ22年W杯カタール大会でも日本に1―2で敗れるなど、1勝1分け1敗で2大会連続の1次リーグ敗退と精彩を欠いた。ドイツ・サッカー連盟はフリック監督を続投させたが、今年9月の親善試合で再び日本に1―4で敗れると、フリック監督を解任。ドイツ代表以上、任期途中の監督の解任は初めてのことだった。14年ブラジル大会まで16大会連続で、W杯ベスト8以上という無類の安定感を誇っていた国が、思いも寄らないような不振にあえいでいるのである。2000年の欧州選手権での失敗(1次リーグ敗退)を機に、ドイツは組織改革や育成改革などに取り組んで、ミュラーやエジルら新世代が台頭して2010年のW杯3位、14年W杯優勝につながったのは有名な話である。しかし、現在のドイツは18年、22年のW杯でつまずき、立ち直れていない。 代表チームの成績を反映した国際サッカー連盟(FIFA)ランキングも2023年12月時点で16位(日本は17位)にとどまっている。サッカー大国の威信は揺らいでいるが、ドイツの「サッカーの底力」そのものが失われてしまったのだろうか?