無呼吸症の医療器具、なぜか日本だけ「重篤な健康被害ない」判断…韓国など4カ国は「最も危険」と評価していた
(※このたび国際文化会館ジャーナリズム大賞・特別賞ファイナリストに選出された記事です。初出は2023年11月7日。データや名称などは当時のものです) 【動画】日本で流通している無呼吸症の医療器具、安全なのか独自に調べてみた 「睡眠時無呼吸症候群」の治療に使われる米フィリップス製のCPAP(シーパップ)装置など呼吸器系の医療器具に問題が見つかり、自主回収(リコール)が進められている問題で、驚きの事実が新たに判明した。 問題の器具は、部材の劣化により患者に深刻な健康被害をもたらす恐れがあるとして、2021年6月から日本だけでなく世界各地でリコールとなっている。日本では、重篤な健康被害の恐れは「ない」という扱いだが、各国での対応状況を調査したところ、韓国やカナダ、オーストラリア、米国では危険度が「最も高い」と判断されていたことが分かったのだ。 なぜ、日本だけ判断が異なり、極めて珍しい対応が取られてきたのか。
日本以外の4か国は危険度「最高」
危険度やリスクの大小を示すため、日本を含むこの5カ国では問題器具の使用が「重篤な健康被害(副作用)や死亡の原因になりうるか」という基準で判断し、三段階のいずれかに分類して、医師や患者らに注意喚起する仕組みをとっている。 日本では2021年7月、輸入販売元のフィリップス・ジャパン(本社・東京都港区)が国内に流通するCPAPや人工呼吸器の自主回収を決めた際に、東京都に対して「重篤な健康被害を生じる恐れはない」と説明し、危険度が低い「クラスⅡ」の案件として報告。都は厚生労働省とも相談したうえで、その通りに受け入れていた。 ところが、日本と制度がよく似た隣の韓国では、輸入販売元のフィリップス・コリア(本社・ソウル市)がこの問題について危険度が最も高い「第1号」の案件として届け出ていたことが、韓国・食品医薬品安全庁への取材で明らかになった。 韓国では日本と同様、行政ではなく輸入販売元が健康への危険度を評価する仕組みで、第1号~第3号のいずれかに分類し、規制当局の食品医薬品安全庁に報告する。第1号は日本のクラスⅠ(重篤な健康被害や死亡の原因となりうる状況)にあたる。 さらに、CPAPが普及しているカナダとオーストラリアでも、この問題は「最も危険度が高いクラス」に分類され、対策が取られていた。米フィリップス製の同じ医療器具が人々の健康に与える危険度について、米国を含むこの5カ国ではフィリップス・ジャパンだけが「危険度が低い」と評価し、当局も追認していたことになり、その経緯に謎が深まっている。