無呼吸症の医療器具、なぜか日本だけ「重篤な健康被害ない」判断…韓国など4カ国は「最も危険」と評価していた
東京都はどう対応したのか
日本では、器具の使用が「重篤な健康被害または死亡の原因となりうる状況」ならクラスⅠ、「重篤な健康被害のおそれはまず考えられない状況」ならクラスⅡ、「健康被害の原因となるとはまず考えられない状況」ならクラスⅢに分類する仕組みだ。だが、誰がクラス分けを判断するのかという明確な法規定は存在せず、その判断は基本的には製造販売業者の手に委ねられ、行政に事後報告する形になっている。 東京都は製造販売業者に対し、問題のある医療器具の自主回収にあたっては基本的には「クラスⅡに該当する」と考え、健康被害の状況などによりクラスⅠやⅢが妥当だと思われる場合には、理由を明確にしたうえで事前に都に相談するよう、日ごろから指導している。これは厚生労働省が医薬食品局長通知を通じて、各都道府県に求めている基本方針通りの対応だ。 都の薬事監視担当課長は今回の件について、「企業(フィリップス・ジャパン)からは事前に説明を受け、国にも相談して(行政としても)クラスⅡが妥当と判断した。一義的に、相手企業の言うことは信用している」と説明しており、企業の「言い値」通りにクラスⅡとして受け入れたことを認めている。 その理由の一つが、フィリップス・ジャパンが行政に対し、「重篤な健康被害を生じるおそれはないと判断しております」と言い切っていたことだ。行政に提出した『医療機器回収の概要』(回収概要 (pmda.go.jp))にも、その通り記されている。 危険度の低いクラスⅡだと、クラスⅠの場合と違って企業側は健康被害の発生状況について原則、行政から定期的な報告を求められることがない。報道発表も行われず、日本ではニュースにもならなかった。問題器具の回収を始めて2年以上の時が流れたが、回収はまだ終わっていない(※2023年11月の記事掲載当時)。
韓国はすでにCPAP回収も終了…なぜこの差が
一方、韓国でも米フィリップス製医療器具の自主回収が始まり、その危険性の評価も日本と同じく、行政ではなく輸入販売元の手に委ねられていた。 しかし、食品医薬品安全庁によると、その輸入販売元で回収責任を負うフィリップス・コリアはこの問題を「第1号」と報告していた。韓国では「重大な副作用や死亡をもたらす恐れがある」場合には第1号、「完治できる一時的・医学的な副作用をもたらす恐れがある」場合には第2号、「副作用がほとんどない」場合には第3号とする仕組みだ。 さらにCPAPについては、器具を紛失したり連絡がつかなかったりした場合を除き、2022年末で回収が「終了した」との報告も届いたという。 米フィリップス製の同じ医療器具の危険性について、フィリップス・コリアとフィリップス・ジャパンはなぜ、異なる評価を出すことになったのか。両社に問い合わせたが、いずれも「回答いたしかねます」との返事だった。