無呼吸症の医療器具、なぜか日本だけ「重篤な健康被害ない」判断…韓国など4カ国は「最も危険」と評価していた
どのように危険なのか、そして判断の経緯は
発端は2021年6月14日、米フィリップスが製造した医療器具の大規模なリコール発表だった。対象は、鼻から空気を送り続けるCPAPやBiPAP、人工呼吸器など呼吸器系の医療器具で、米食品医薬品局(FDA)は世界で1500万台に及ぶとみている。その原因となったのが、器具が発する騒音や振動を防ぐため、本体内部に「防音用発泡体」として埋め込まれているポリエステル系ポリウレタンという素材だ。 この素材が劣化すると、(1)小さい微粒子となる、(2)揮発性有機化合物(ガス)を放出する――という二つの問題を引き起こし、この微粒子やガスを患者がマスクから吸い込むことで健康被害を受ける恐れがある、とフィリップスは説明した。 (1)の微粒子には、ジエチレングリコールなど三つの化学物質が含まれ、最悪の事態としては腎臓や肝臓といった臓器への有害作用や毒性・発がん作用の可能性がある、と指摘。とりわけ肺に基礎疾患のある患者や、心臓予備能が低下している患者には重大な問題となる可能性がある、とも説明した。 (2)のガスについても、ジメチルジアゼンなど二つの化学物質が含まれている恐れがあり、最悪の事態としては毒性・発がん作用の可能性がある、とした。 米国の規制当局であるFDAは、このリコールを最も危険度が高い問題であることを示す「クラスⅠ」に分類し、米フィリップスに2カ月に及ぶ査察に入った。米国ではFDAが連邦行政命令集(CFR)という法規定に基づき、健康に及ぼす危険性の程度に応じてクラスⅠ~Ⅲに分類する仕組みだ。結果はホームページなどで積極的に情報発信し、医療者や業界関係者、患者らに広く危険度を知らせている。 ところが、米国から製品回収の知らせを受けたフィリップス・ジャパンは翌7月、日本国内でもCPAP約34万台、人工呼吸器約2万2000台の計36万4151台を自主回収すると発表した際に、なぜか危険度が低い「クラスⅡ」として東京都と厚生労働省に報告していた。