パッキャオ大番狂わせは全米メディアが報じる「議論を呼ぶ判定」だったのか
6階級制覇をしているWB0世界ウェルター級王者のマニー・パッキャオ(38)が2日、豪州のブリスベンで5万5000人を集めた観客の前で、同級1位で、ブリスベン出身の“無名のボクサー”ジェフ・ホーン(29)に判定で敗れてタイトルを失った。両ボクサーにダウンシーンはなかったが、パッキャオはバッティングで頭をカット、ホーンも右目上をカットする流血戦となり、「117-111」が一人、「115-113」が2人の0-3判定だった。世界初挑戦の豪州のボクサーが伝説の王者を破る大番狂わせの王者交代劇を複数の全米のメディアは「議論を呼ぶ判定」として伝えた。 全米にPPVでなく無料で生中継を行ったESPNのリングサイドアナリスト、テディ・アトラス氏は、「116-111」の独自採点をつけてパッキャオを支持。「悪臭のする採点結果」「ジャッジは腐敗している」と辛らつなコメントを残した。アトラス氏は、名トレーナー、カス・ダマトに師事、若い頃のマイク・タイソン(喧嘩別れしたが)や、元WBA・IBF統一世界ヘビー級王者のマイケル・モーラーらのトレーナーを務めた人物。アトラス氏は、「ジャッジは効果打を見ることが重要だが、ホーンのそれは明らかに少なかった。そしてほとんどKO寸前だったではないか」と、「117-111」の6ポイント差をつけたアメリカ人ジャッジのワレサ・ロルダンの採点を強く批判した。 CBSスポーツも独自採点を掲載して114-114のドローとした。 多くのメディアが「議論を呼ぶ判定」の根拠のひとつとして「CompuBox」による独自調査を引用している。同サイトによると、ホーンは625発のパンチを繰り出したが、クリーンヒットしたのは92発で、ヒット率は15%。対してパッキャオは、573発のパンチを出してヒット数は182発。パッキャオのヒット率は32%で「パッキャオは約2倍の有効打をヒットさせた」と複数のメディアが伝えた。 試合後、パッキャオ自身は「判定はリスペクトしている。言い訳はしない」と潔かった。 だが、専属トレーナーであるフレディ・ローチは、6ポイント差の採点をつけたロルダン氏を呼び出して「なぜ、このような採点になったのか説明して欲しい」と詰め寄ったという。 パッキャオ陣営のフィジカルコーチを務めているジャスティン・フォーチュンは、「ジャッジの判断はおかしい。納得はいかない。マニーは戦いに負けたが、ジェフ・ホーンはカボチャのように見えた」と批判した。 だが、どうだろう。十分にありえる許容範囲内の判定ではなかったか。 確かにパッキャオは、一度も決定的なダメージブローを浴びたシーンはなかった。逆にパッキャオは、9ラウンドに左右のフックを強引に振り回してホーンをKO寸前にまで追い詰め、そのインターバルでレフェリーが、ホーンのコーナーに「次に戦意を見せないと試合を(TKOで)止めるぞ!」と警告を与えたほどだった。しかし、続く10ラウンドは、ホーンが反撃した。体格差を生かしたパワーでもスピードでも勝るホーンは、終始、積極的に前へ前へと出て、バッティングで2度、パッキャオの頭から流血させるなど、“レジェンドボクサー”が嫌がる距離で戦い続けた。