東ちづる「母からの高すぎる要求を<愛>だと勘違いして、<いい子>をずっと演じ続けてきた。40歳、母娘2人で受けたカウンセリングで、自分らしさを取り戻して」
◆不安がったり泣いたり とはいえ、最初から「カウンセリング」という方法を提案したわけではありません。まずは自分の力で母を変えようとしました。 その頃、60代にして夫を亡くしていた母は、2人の子どもをシングルマザーとして育てる妹と同居していて。孫たちに対しても「一番になりなさい」「愛される人になりなさい」と説く姿を見た私は、危機感を覚えました。 「お母さんの考え方はおかしい」「いつも『頑張れ』と言われて育った私はずっとつらかった」と訴えてみたのです。 母にとっては寝耳に水。これまでそんな反抗はされたことがないのにいきなり否定されたので、「この歳でそんなことを言われるとは思わなかった」「今さら私をあなたの理想の母親像にあてはめようとしているの?」と、たちまちケンカになっちゃって。 気づけば私も、昔、母に言われて嫌だった「あなたのためなんだから!」というセリフを投げつけてしまうありさまでした。
そんなとき、たまたま仕事を通じて、カウンセラーの長谷川先生と知り合い、力を借りることにしたのです。 しかし、「カウンセリングを受けよう」と言っても母は戸惑うばかり。そもそも、母自身に具体的な悩みがあるわけではないのです。 「もっと自分らしく生きてほしいの」と説明しても、「私は好きなように生きているわよ」と言い張ります。挙句、「催眠術のようなもの?」などと不安がったり、「私はおかしい人じゃない!」と泣いたり……。胸が痛みましたが、扉を開けてしまった以上、もう後には引けません。 ようやく、「会ってみるだけなら」と同意を得て、2人で長谷川先生に会いに行くことができました。すると、どんな話でも受け入れてくれる先生の人柄に安心し、以降のカウンセリングも承諾してくれたのです。 (構成=内山靖子、撮影=宮崎貢司)
東ちづる
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