学校給食が完全無償化の韓国、食料自給や農業学ぶきっかけに…日本は30%で地域差とくすぶる不公平感
10月中旬、のどかな農村地帯が広がる韓国ソウル近郊の京畿道華城市にある私立華城中。生徒たちは多くの地元産食材で作られた給食をおいしそうに食べていた。 【動画】韓国・華城中学校の生徒たち「学校給食おいしい」
「地元産」優先を条例化する韓国自治体
「毎日の給食に近くで生産された食材が使われるのは安心できる」。祖母が農家だという生徒会長の3年生(15)は、こう話し笑った。韓国では公立・私立を問わず、小中高・特別支援学校の給食が完全無償化されている。地元産を優先するための条例がある自治体も多い。金利娥校長(58)は「給食は単なる食事ではなく教育の一環。食料の自給や農業を学ぶきっかけにしてほしい」と強調した。
チャーハン、サラダ、みそ汁、白菜キムチ――。韓国・京畿道華城市の華城中で、生徒たちが楽しみにしている給食を支えるのは、地元の農家たちだ。
「学校給食は日々、大量に食材を使ってくれるのでありがたい。子どもに食べてもらえるのも生産意欲につながる」。10月中旬、畑で給食に提供するキャベツを眺めながら、野菜農家の尹栄煥さん(74)が語った。
無農薬で栽培しており、「一般の消費の場面では安価だが、給食ではきちんと対価をもらえる」と喜ぶ。安定した収入があり、息子が継ぐことが決まっている。
尹さんら農家の農作物を集めて、各校に供給する市傘下の「華城フード統合支援センター」によると、市の条例で地元産の有機農作物の活用がうたわれている。現在、給食で使う食材は約75%が市内産。市外産でも近くの自治体から調達することになっており、輸入品はエビやオレンジなど一部にとどまるという。
都市と農村が併存する華城市では人口約100万人に対し、農業者が約3万人いる。センターの給食事業本部の李彦雨本部長(63)は「遠くから運ぶと、防腐剤が必要で健康上の懸念もある。華城では地産地消がうまく進み、農業も持続可能になっている」と話す。
食料自給率は日本と同様に低いが…
給食に詳しい慶熙大の姜乃栄講師(52)によると、韓国では外国産による食中毒や、「教育は無償」との憲法の規定などを理由に、地元産の使用拡大や給食無償化を求める保護者らの市民運動が盛り上がり、選挙の当落を左右するようになった。結果的に2010年代以降、自治体ごとに無償化が実現し、地元産を使うための条例制定も進んだ。