高校生が日本酒造り、度数5%の甘口…当初「飲めんがになんで造るんか」と困惑も「早く味見したい」
富山県魚津市の新川高校と市内の酒蔵「魚津酒造」、農家「MK農産」が協力して進めた日本酒造りが半年をかけて完結した。でき上がった酒「Twinkle(トゥインクル)」は、麹(こうじ)の使用比率を極限まで高めて甘さを出し、低アルコールに仕上げた“大人のジュース”。生徒は「飲めないながらに想像を膨らませた。多くの人に愛される酒になってほしい」と願っている。(吉武幸一郎) 【画像】「ネギ切っただけよ」プライベートで炊き出し準備の滑川市長、SNS大反響に困惑
「飲めんがに」
計画が始動したのは今年6月。「地域に残り、地域を支える次世代人材を育てる」というテーマの下、3者がタッグを組み、まだ酒が飲めない高校生を主役にするという異例の挑戦に踏み切った。
「飲めんがに、なんで造るんか」――。当初、生徒は困惑した様子だった。2年の生徒(17)は「まったくなじみがないからこそ、何もかもが不安だった」と話す。
それでも、6月上旬に原料になる飯米「コシヒカリ」の田植えを体験すると、気分は変わった。1年の生徒(15)は「自分たちの植えた米が日本酒になると思うと、感慨深くなった。飲んだことがないからこそ、誰でも飲める酒を造りたいと思った」と振り返る。
生徒は9月、議論の末に「初めて日本酒を飲む人も感動する味」という方向性を定め、食事に合う甘い酒を目指した。これを基に奮闘したのが魚津酒造の杜氏(とうじ)・坂本克己さん(53)だ。
一般的に酒は、麹と蒸し米の比率で味わいが変わる。麹が増えると甘みは増すが、酒造りに要する時間も長くなり、麹は2割程度に抑えるのが主流だ。
ただ、今回は甘さを重視し、精米100キロのうち99キロを麹にした。その上、アルコール度数も日本酒としては異例の5%に決めた。坂本さんは「発酵が進むのか未知数で、仕込み中は毎日不安だった。タンクをのぞいて、ブクブクと発酵する様子が確認できた日は本当に安心した」と心境を吐露した。
地域産業学ぶ
11月29日には新川高で生徒が初めて完成した酒と対面した。蒸し上がった米にこうじ菌を振りかける作業を体験した生徒たちは「最終的に酒になっていて感動した。早く大人になって味見したい」「何も知識がないものを一から作り上げる経験ができ、自分で考える力が身についた」と語っていた。