「生命保険は『不幸クジ』」…それ本当に必要? 荻原博子さんに聞く「インフレ時代を生き抜く知恵」
生保商品がわかりにくいのは、用語が難しいからで、よく理解しないまま契約する人が少なくないが、その仕組みはとてもシンプルという。 荻原さんの著書の『保険ぎらい』(PHP選書)によると、一般的な生保商品は「宝くじ」と仕組みが似ている。傷病や死亡に備え、みんなが掛け捨てでお金を出し合い、不幸に見舞われた人にお金を支払う「不幸クジ」のようなものと説明する。その仕組みを踏まえたうえで、さらに非常時に用意された公的支援制度などもフルに活用すれば、必要な生保商品は限られてくると、荻原さんはみている。 ◆子どもが社会人になるまで、1人につき約1000万円の生命保険を そもそも、生保の契約について、荻原さんは「子どもが成長したらいらない」と話す。子育て中に傷病や死亡で仕事ができなくなった場合の備えとして、子ども1人が社会人になるまでの必要額を1000万円とみて、その金額の生保を契約しておけばいいという。 その契約の際には、迷わず保険料の一番安い会社を選ぶのがいいと、荻原さんはアドバイスする。支払われる保険金が同じ額なのに、保険料が違うのは、会社によって維持管理など上乗せされる経費が違うからで、店舗などのないネット系の保険会社が安くていいとも勧める。 一方、保険料が安くても、保険会社が倒産するのが心配という人もいるだろう。荻原さんは、保険金を受け取るときに、保険会社の規模や知名度は関係ないと指摘する。保険会社は倒産しても、生命保険契約者保険機構に加盟しており、加入者の保険契約が別の会社に引き継がれるため、心配無用という。より詳しくみると、掛け捨て保険の部分は全額保証の対象で、貯蓄型保険の部分は減額される可能性がある。 子どもが成人すれば、保険金1000万円の保険契約も不要になるが、自分が傷病に見舞われたらという不安はあるだろう。そうした不安に、荻原さんはこう話す。 「サラリーマンなら、傷病保険をつけなくても、傷病手当金など、いろいろなものがあります。また、シニアの人たちは自己負担が軽くなります」 傷病時には民間の医療保険に加入しなくても、公的な医療保険の「健康保険」でカバーできる部分が多いという。自己負担は3割で、さらに高額療養費制度により、毎月の負担額は一定限度に抑えられる。勤労者が4日以上、仕事に就けないと傷病手当金の制度が用意されており、給与の3分の2が、最長で1年半支給される。就業中の傷病には労災保険が適用されることもある。 老後の医療費を心配する人もいるが、70歳を超えると、ほとんどの人が現役時代よりも負担が軽くなるとも指摘する。